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岡本正剛著「大東流合気柔術」出版秘話2

(承前)大東流で云う旦那芸とは、他流派では長者の術と称するもので、惣角の手裏剣もこの部類に入ります。
ここで改めて申し上げます。が、貴殿が堀川幸道から伝授を受けられた合気柔術の中の一部である旦那芸を「合気之術」と勝手に改称して世間に発表することは、後日において貴殿そのものの信用問題にも、関係してくると思われますので、この件に関してはくれぐれも、ご注意申し上げておきます。
私も堀川さんに事については、貴殿もご存知の如く、一度は本を発行する予定で、一冊分を書き上げました。ところがいざ出版の段階で、堀川さんの知名度がないこと、及び出版社側でその年齢にクレームが付き、また、惣角直門の人たちからも旦那芸の堀川さんを紹介することが大東流そのものに大きな誤解を招くことになる等の理由で、発行が不可能になりました。
しかし、私は大東流の継承者は少ないので、いつしかまた、堀川さんの名前と業績を紹介したいと思っています。この場合でも、旦那芸の堀川幸道として紹介するつもりはありません。そのためを思い写真等は悪用されないよう手を打ってあります。
しかし、貴殿がこれから出版する本の中で、堀川さんが知るはずがない「合気之術」を知っているとして宣伝するのであれば、私もやむを得ず意に反して堀川さんの実像公開をいたさねばならなくなるでしょう。正しい大東流の普及活動に命を賭けている者にとって、当然の義務であると思います。
貴殿はご存知ないことと思いますが、大東流は幕末期に完成されたもので、会津藩が総智を傾け日本伝統武術のエキスを集約化したものだけに、その一部を食いちぎっても八光流や植芝合気道のごとく。世間には目新しい特別な秘伝技のごとく映ります。真の大東流を世間に知ってもらうためには、大変な努力と、また気の長いほどの時間がかかることを我々同志は覚悟しております。私の場合久琢磨先生との約束(武田惣角経由のもの)もありますので、大東流の実像は世間周知の認識に従い少しずつしか発表出来得ません。そのため大東流の全体像はまだ途中発表の段階であります。
また、大東流に三大技法(天・人・地)が存在していたという資料は、私の著書「護身杖道」で初めて公表したものです。(続く)

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