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合気柔術の技法10

大東流合気柔術は技法が秘伝ということよりも、この基本動作からもわかるように、上級武士の風格作りにある。つまり「位」のことである。

黒澤明の最近の作品「影武者」、このストーリーでは武田信玄が死去し、3年間はその死を公開するな、という遺言から影武者をつくる必要があった、と始まる。まず、味方をだますことからである。影武者となる男は泥棒であった。腰を掛け顔を見せているだけでは、皆をごまかせていても、威風堂々なる存在を皆に見せなくてはならなくなった。練習に練習を積んで閲兵式に臨んだ。途中バレないと自身を持ち、馬に鞭を当て疾駆しだした。案の定、皆の見えないところで落馬する。もし皆の見えるところで落馬したら一度にバレてしまう。ものすごく、叱られる。秀吉は晩年駕籠に乗ったが、信長も信玄も小大名といっても、子ども時代から騎馬武士として育てられている。どんな場面でも落馬はありえない。このことを影武者で扱っている。

このことにより合気柔術が若殿用のものであることがわかると共に、この基本動作だけを見ても大東流合気柔術が捕方武術である他の古流と違うことがわかる。捕方柔術、例えば竹内流の場合は小具足(足軽)であり、他は武士でない者も習える捕方術なのである。また、大東流は柔術が鎧組打ち、合気柔術が殿中作法であり、素肌武術となっている。「護身杖道」で大東流の説明をしたとき、柔術を基本パターンとして、合気柔術→合気之術と発展していくと説明した理由はここにある。

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