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技法真髄10

(承前)武術には、エィ・ヤー・トー・ハッ等の掛声がある。この四つに限らず日本人が言葉に出せるだけの掛声があるハズである。

天地の呼吸に合し、声と心と拍子が一致して言魂となり、一つの武器となって飛び出すことが肝要で、これを更に肉体と統一する。声と肉体と心の統一が出来て始めて技が成り立つのである。霊体の統一が出来て、偉大な力を猶更に練り固め、磨き上げていくのが武術の稽古である。かくしてゆくと剣で切るべく仕向けることが分かり、また世の中の武術の大気魂がその稽古の場所及び心身に及んで、練れば練るほど武の気魂が集まりて、大きな武術の太柱が出来る。柳生十兵衛も塚原卜伝もあらゆる古の達人名人の魂が、集まり来たりまた武術の気も神の恵みによって全部集まり来るの理を知り稽古に精根をつくすべし。

この人間に与えられたところの言葉の魂を肉身と一つにして、日々稽古して天地の呼吸と合致せねばならぬ。ある時には「エィ」と切り「ヤー」と受け「ドー」と離れる。これは同じ力の者同士は隙がないときには「ドー」と離れることが出来るが、一方に隙があれば「エィ」「ヤー」と切られてしまう。

古はかく「エィ」「ヤー」と合し、「ドー」と離れ、また「エィ」「ヤー」と結ぶ。そこに互いに隙のないよう錬磨を重ねていったのである。かくのごとく熱心に稽古の度を重ねるに至らば、敵と相対したときに、未だ手を出さぬ内にすでに敵の倒れた姿が見える。そこでその方向に技を掛けると面白く投げられる。技は熱心になればかくなるものと信じて錬磨すべし。(3肩の項 終り)

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