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武道の極意・秘伝集20

9他流試合に「帯の矩(かね)」という教えあり。はなはだ面白き意味あり。例えば、双方とも立合の場に至り、目と目を見合わせおる内に、この方未熟にては、我がなさんとするところ、必ず目にかかるものゆえ、向こう明らかなれば悟ることあり。左様なときは、右「帯の矩」というて、我が目の付け所を替えて、相手の帯の所に目を付くれば、向こうはそれに迷って、悟り得ぬものなり。その時に不意にわが思うところを打ち・突ければ、敵に勝つという意にて、大いに面白きところあり、心得て善きことなり。
補足説明:目付は極意そのものです。新陰流兵法では、まず、既述の「三見」があり、向上の目付として「目付二星(にせい=両目)之事」があります。目は心の窓といわれるように、目を見て相手の意図を察知する必要がありますが、初級者が目を見ることは推奨されません。敵の威圧に押され、我が方の恐れ迷いなど見透かされるからです。鍛錬を積んで初めて敵の目を見ることが出来るようになります。さらに、相手の両肩(遠山)への目付や「二目遣」があります。兵法歌に「二つ目遣い 色を仕掛けて 敵の心 引き見て勝つぞ 心やすくも」とあります。「帯の矩」の教えに通ずるものがあります。

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