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懐剣術(下)

懐剣術の初伝では、懐剣の単独操法の他、合気杖の初伝技法(杖対太刀の組形)を中心に稽古します。既述のとおり、懐剣の間合は素手技法の間合と同じですから、合気杖から入り、恐怖心を払拭し入身転身法をマスターするのです。極意はこの体捌にあるのですが、詳細は口伝です。そして、最終的には、懐剣又は素手対杖・太刀・小太刀・短刀・懐剣という組形を稽古し完成となります。

中伝では、懐剣対懐剣(短刀)の組形を稽古します。女性から懐剣で襲われる想定です。大東流らしくこの中伝も、その中で初伝・中伝・奥伝・秘伝という区分がされており、一見複雑な構成です。基本は後から襟を掴み鎖骨の間を刺して来るという攻撃ですが、その変化が多いことから上記の区分がされています。

奥伝は、二刀懐剣です。二刀とは、右手に懐剣、左手で「かんざし(簪)」を用いる操法です。「かんざし」では切れませんから、これを「刀」と称するのは正確ではありませんが、このように呼んでいます。ここでは対太刀による組形と、懐剣による止めの差し方を教えています。

竹下ノートには、短刀による攻撃に対する技法(短刀取)が90本程度紹介されていますが、その中に短刀を懐剣の持ち方で突いてくるという技が多くあり、また、懐剣術の返技に相当する技法も5本紹介されていることから、植芝盛平も懐剣術を一定程度習っていたことがわかります。(完)

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