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目線

武術の歩法では、体を上下させず、頭・腰を一定の高さに維持するように、と教わります。
これは、体の上下動により重心も上下して自身の安定を失うから、これを防ぐために必要な歩法だとされています。

この他に目線の高さを維持することもその理由の一つである、と筆者は思っています。
刻々と変わる視覚情報によって、自分の位置、相手との距離、その他必要な情報を取捨選択、整理するという膨大な作業を頭の中で行っています。頭がやるべき仕事が多いところに、目線が上下することで視覚情報がさらに増え、これを補正するという余計な作業も必要になります。この結果、分析性能が落ちてしまい、危険に気づけない、うまく捌けないなど、実害が生じるのでしょう。目線の維持の大事です。

大東流合気柔術には、この目線を狂わせることも教えています。いずれも奥伝・秘伝です。
その一つは、蜘蛛の巣伝といわれる固め技です。地に押しつけられたり逆さまにされたり、通常ではありえない目線を体験させることで、その恐ろしさ、見える景色の違いを悟らせ、発想の転換や固定観念の打破を体得させるのです。
もう一つは、目潰しです。「裏拳で目潰しをする技法は、大東流以外の古武術にはない方法である。目潰しは相手の神経を幻惑する技法である。柔術は正攻法であって、あるのは当身である。」と鶴山先生は語っています。気合術である柔術は気合いとともに当身を出し、気合いを重視しない合気柔術では目くらましという、最初から駆け引きを教えているのです。

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