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「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」15

有無の調子 有りも有り 無きも有りの 心持ち 分別をして 使え兵法
他の拍子 心に覚え 何時も 自他一拍子と 至る兵法

補足説明:新陰流兵法は音楽であると評した指導者がいます。これを解すれば…常に頭の中で、一定の拍(4拍子)をきざみ(テンポは人それぞれ)維持する中で、例えば二拍三連など表出する(相手に応じて対応)ということでしょうか。
さて、この和歌は、有無調子之事の教えです。十兵衛は『月之抄』において、これは手裏見についての心持ちである、目付が動く区が「有」動かぬが「無」と宗矩の解釈を記述しています。別の解釈として、手裏が見える=有、手裏が見えない=無ともあります。後年、長岡桃嶺は簡潔に次のようにまとめています。「敵が打ってこなければ、我が先に打つ=無は有、敵が打ってきたら、我はそのまま無拍子に勝つ=有は無、敵が有拍子(例えば、中下段から雷刀に変じて)に打ってきたら、我も有拍子に勝つ=有は有」
 
兵法は 勝ちたがるこそ 大下手よ 負けぬようにと すれば勝ちなり
易々と 人を打たれぬ 根本は 人打ちたがり 足掻(あが)く故なり
勝ち負けに 心を止めぬ 上手こそ 寝ても起きても 人に打たれぬ
補足説明:武術は負けないこと(生き残ること)が大事です。「勝つことはいたさぬが、負けぬすべを存じ居る」柳生宗矩の座右の銘とされる言葉です。スポーツのように勝たねばならないというプレッシャーは良くない、負けなければその結果として勝ち(生き残ること)につながる、このような考え方もありでしょう。

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