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槍と合気道31

関野氏が論点として持ち出した「槍と刀」は実に象徴的であって、表芸(陽流)たる槍術、裏芸(陰流)たる刀術を対等の立場において論究している。このことは関野氏の認識不足、ということではなく、世間一般の武道家と同じ常識的な通念を持っておられる、ということであろう。

武田惣角が伝えた大東流三大技法は弓・馬・槍を除いた、サムライ武法の裏芸として構成されていることが最大の特長である。大東流は陰陽法とも呼ばれており、陽流兵法(表芸)に対する陰流兵法(裏芸)としての立場をとり、この点、新陰流兵法の理論構成に基づいている。すなわち、刀法を中心とした「新当流を破る陰流」の勢法をもって、新時代における武法(表芸)であることを具現させた、という理論である。護身用刀法を徳川幕藩体制における表芸とした、ということであった。

また、大東流三大技法はその技法分類・構成内容・理論体系に内家拳(中国拳法)の考え方が応用されている。この点、他の古流武術と大きく異なっている。見かけは日本武道そのものだが、基本理念・技法理合・応用武器術等の一貫性は内家拳そのままである。中国拳法は清国時代に完成をみたとされ、内家拳の三大技法(太極拳・形意拳・八卦掌)の整理方法と同一同根のものといえるからである。こういった中国拳法の文献は江戸後期に日本に流入したもので、大東流三大技法構成の参考にされたことは間違いない。(完)
 
鶴山先生の「槍と合気道」の連載はまだ続きますが、引き継いだ会報に欠損があり、その内容が不明なこと、『護身杖道』の目次紹介など脱線していること、最終的に連載がどう終わったのか不明なことから、今回で完結とします。なお、大東流に対槍技法があるかについては、「ある」が回答です。具体的には杖を槍と見立てた形があります。原典たる新陰流兵法にも同様に「あり」こちらは打太刀を槍と想定した勢法です。

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