諸流派演武大会(下)
2番目は、野田静山先生による香取神道流の抜刀術だ、先生は74歳の高齢にもかかわらず、その眼光鋭く、足捌き・腰捌き・体の乗せ方に目を見張らせるものがあった。
3番目は、小林・新田両先生による戸田派武甲流、薙刀、槍対太刀、鎖鎌等で裂帛(れっぱく)の気合の中にも演舞かと思えるようななめらかな体捌き、出来る女性は違うと感嘆。
4番目は、私たちの総師鶴山先生を中心とする大東流合気柔術だ。指導員クラスが選抜され参加したが、演武場が板の間であることも、当日何をやるのかも知らなかった。鶴山先生から次のとおり演武上の注意を受け、演武の前から緊張してしまった。
「本日は、板の間で演武する。もし受身を取りそこね捻挫、骨折、打撲等があった場合は、責任をもって治してやる。今日の演武は大東流を原形に復した正しい姿でやる。日本代表としての面目と、他の一流の諸先生の立場もある我々としては、若さと迫力で力一杯の演武をしたい。ボクシングの選手も試合に出場すれば一ヶ月は打撲で顔中が腫れ上がる。畳を練習場に使用することになったのは、明治になって畳柔道といわれた講道館柔道からである。本当の大東流は板の間でポンポン受身も取れなければダメだ。」
演武は、小具足、甲冑技法、馬上操法、乱取り、正面打5人捕、八方分身であった。今回の公開が元朝日新聞社理事であった久琢磨先生の後見で大東流合気柔術の神秘のヴェールを脱ぐ役目を果たした意義は大きかった。
5番目は、柳生心眼流江戸派体術で、甲冑で身を固めた武士が取っ組み合う姿が思い浮かび、その迫力にここは戦国の世かと錯覚させられた。
6番目は、我々には先ず見ることがかなわなかった御殿術大坪、小南両先生による柳生新陰流兵法だ。三学円の太刀、九箇之太刀など凜とした太刀捌きに感激。
最後は、和道流空手の最高師範大塚博紀先生。先生はこの日の演武者の中で最高齢(当時77歳)であったが、そんなことは全く感じさせない素早くかつ軽妙な動きに、当身の変化の素晴らしさに驚嘆。空手は、手首を鍛え、蹴りも当ても一手一手極めていく動きの鈍いものだと、思っていただけに、その認識が崩された。
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