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杖道護身の心得2

(承前)ここで考えなければならぬことは、明治維新までの剣者は常に生死の厳頭(がんとう:岩の突端)に立ち、朝夕命のギリギリの所を見つめつつ剣技を練ったことであります。山岡鉄舟が門人を指導するのに「剣術の達人になるには、生の執着を断ち切る修練が何より肝要だ」と諭したというように、生死の絆を断ち切って、一大事に当面して少しのたじろぎも見せず、生死悠々として、武士の本分を果たすためには、どうしても命の根源を明らかにし、生死を超えた絶対的な世界に到達する必要があるものとされています。剣道の真の姿が、現代の竹刀剣道ではなく、剣刃上の禅だと言われる所以はそこにあります。(続)
補足説明:武術の奥義は心身一如の境地に到達してはじめて得られるとされています。身(技・技術)は稽古によって一定のレベルに持っていけます。しかし、いくら技術的に優れていても、今風に言えばメンタルが弱ければ、その技は役に立ちません。まして、命のやりとりという極限状態で平常心を維持し自分の実力を発揮する。この境地を目指すことが武術の修行です。
古の達人たちは、この境地に至る方法として宗教的アプローチを活用したのでした。心のコントロールは仏教(禅)でも必須のものですから、その点親和性は高かったのです。これらによって、いわゆる心法(勝負の際の心持ち・その作用・統制方法)が確立されていったのでしょう。

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