見出し画像

腰の廻りと江戸柳生躰之術(下)

江戸柳生系合気柔術を習う人たちは、部下の仕事の大変なことを知っているのである。道中はゴロツキに狙われ、旅籠では護摩の灰に狙われるということで、旅費などの金品と重要書類は分けておくなど留意点を教える。仕事で旅をする武士にとって、道中での不始末はお家断絶にもつながるのであるから、そのアドバイスの一言に強い感銘を受けるのである。
このような時の話題(話の展開)にするための体験学習が合気柔術の応用技法なのである。具体的には、「腰の廻り=第1か条応用技法」で両手持ち(抜刀阻止)から始まる6本(①2か条→1か条→回転投→抜刀、②両手2か条→突き飛ばし→抜刀、③柄小手返→抜刀、④両手切り下げ→合気投、入身投→抜刀、⑤天地投当身捌→抜刀、⑥2か条→裏返→当身・抜刀)、転身を伴う4本(詳細略)とこれらの裏技である。帯刀による第1か条の応用技がなぜ必要か、これは武士の心得を教えている体験学習なのである。また、すべて「油断めさるな」という意味でもある。
世襲によるポストは妬み(ねたみ=自分はそのポストに就けないことに対して憎しみや怒りを持つ)や軽蔑の対象となりやすい。若殿は馬鹿殿と揶揄されるが、仕事の上で、予測していた男(馬鹿殿)とは違うという気持ちを相手に起こさせるよう、体験学習をさせるのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?