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手ほどき

鶴山先生によると、手解という言葉が始めて武道用語として出現したのは、明治26年11月に初版がでた「天神眞楊流 柔術極意教授図解」が初めてだそうです。
手解とは、初学者に学問や技芸の初歩を教えることですが、鶴山先生は少なくとも江戸時代には、武道用語としては、「ない」言葉だったと述べています。なぜならば、剣術にせよ柔術にせよ武士階級の人のみが必修科目とされたものであることから、初心者向けの必要性はなかった、つまりいきなり形から稽古を始めていた、ということです。

ところで、上記著作が出版された背景は、日本全国の警察署に柔道を習った人たちが派遣され柔道に対する認知度が高まるにつれ、その原典と言われる天神眞楊流柔術の宗家を担ぎ出す人がいて、武術を全く知らない人の独習を想定して出版されたのです。手解という言葉は、江戸時代の天神眞楊流柔術にも、さらにその原典とされる楊心流・神之神道流にもなかったそうです。

なお、同書序文には、「天神眞楊流は、すなわちその一大流派にして予も往年(略)その流儀を修めたることあり(略)その教旨中には自ら玄奥の義ありけだし深遠なる研究の結果たることを信ぜり、今日予が講ずるところの講道館柔道もその一部を実にこの奥義を応用したるものにして、この流永く世に伝わり広く人の学ばんことを予の深く希望するところなり(略) 明治26年11月下旬 講道館師範嘉納治五郎識」とあります。
この本は大正6年には改訂四十一版を数え、柔術入門書としてはベストセラー本だったようです。

嘉納治五郎


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