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稽古着について

鶴山晃瑞著「図解コーチ護身杖道」において、先生は次のとおり力説しています。

1武道衣とスポーツ衣の相違点
武道をスポーツの一種であると認識している人が多い。これは、現代武道に属する剣道、柔道、空手等が競技スポーツ化してからの現象である。現代武道が目標とするものと日本伝統古武術が目的とするものは、外形(武道衣)は似ていてもその内容には本質的な違いがある。
現代武道は、スポーツと日本武道が融合した新しいものである。外形は日本の伝統武道を代表しているかの形をとっているが、その内容は競技に徹した競技スポーツとなっているところに、現代武道の特色がある。
現在、世界中に普及している各種の競技スポーツは、その競技を通じて、筋肉を強化し、スタミナを増強させることに主な目的を置いている。そのため、スポーツ衣は体に合わせ伸び縮みできるように作られており、デザイン的にも、また実質的にもリラックスさせる効果を上げ、緊張をほぐす役割を果たすことで、筋肉強化のスポーツ理論からは極めて理想的に作られている。
武道衣はスポーツ衣と比較すると、古い時代の緊張を伴う日本独特のものとなる。しかし、日本伝統古武術を習う者にとって武道衣の着用は必要欠くべからざるものになっている。武術の技法そのものが、徳川鎖国時代の中で醸成された日本独特のサムライ文化がカリキュラムされたものである。武道衣はそのサムライ文化を外形的に表現したものである。
2武道衣は現在でも必要か
護身杖道の練習には、武道衣が必要である。それはスポーツ衣を持っていても、武道衣がそれより高価であっても絶対に必要なものである。武道衣の着用が月に1、2回で、その着用時間が1、2時間であったとしても、スポーツウエア等のラフなスタイルで間に合わせてはいけない。
護身杖道は日本の伝統武術である。「古くて、新しい美の心」を学びとることに真の目的がある。スポーツ衣は、それをまとうことにより緊張した精神をリラックスさせるが、武道衣は着衣することにより日常生活の疲れで緩みきった精神を引き締める。といって、武道衣が窮屈に作られているわけではない。武道衣はフリーサイズであるから、着衣したからといって筋肉が緊張するわけではない。あくまで、内面的な精神構造の引き締めを促すのである。
武道衣の着用は、その技術の習得のいかんにかかわらず、無意識のうちに日本武道が内在する精神的緊張を培ってくれる。
しかして、武道衣の着用は、日本伝統武術の入り口に足を踏み入れたことになる。

あえて、武道衣を避けることにより、武術という取っ付きにくさ(面倒な印象)を解消する、武術の技法を利用しながらも体の使い方を強調したい、スポーツに応用したいなど、一定の効果が期待できるでしょう。また、武道衣の着用を義務づけることで、伝統武術であるとの印象を植え付けたいなどの思惑があるところもあるでしょう。
おそろいのTシャツや流派名を刺繍した道着などの着用で、一体感の醸成を図る、帰属意識の強化を図る、これらは稽古の際の着衣としての共通する目的でしょう。
それぞれ、何を目的としてどう稽古するかは、異なる訳ですから、当然、何を着ようと自由です。他人がとやかく言うことでもありませんが、稽古着=武道衣の意義は知っておいて損はないでしょう。

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