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沢庵和尚35

不動智神妙録の本文の終りに、「御諌(ぎょかん)申し入れるべく候」とする、いわゆる忠告文と呼ばれる書き付けがある。本文で触れていない論点について、忠告文にこと寄せて指摘している。その概要は・・・

まず、修身論
貴殿は、兵法においては古今無双の達人、官位俸禄、評判も華やかだ。この大厚恩を忘れず忠をつくせ。それには、まず、我が心を正しくし、身を治め、出仕を怠らず、一家・使用人にも礼儀正しく接せよ。

続けて、君臣論と士道論
君臣上下善人であれば、民は豊かで、国は平和になる。貴殿の兵術の心が正しければ、一心の働き自在にして、数千人の敵をも一剣で随えることができる。その心が正しくても外見からはわからない。一念すれば善と悪の二つが生じるから、このことを分かった上で、善をなし悪をなさざれば、心は自ら正直になる。悪と知りながら止めないのは、それを好む自分があるからだ。
善人であっても、自分が気に入らなければ登用しない、無智であっても、一旦自分が気に入れば登用する。これでは善人が用をなさない。無智の部下が幾千人あっても、平時でも役に立たず、有事に臨んで一命を捨てて頑張ろうとする者などいない。貴殿の弟子の取り方をみてもこのような傾向がある、苦々しいことだ。好き嫌いは病であり、悪に落ち入ること知らないのだ。他の人には分からないとおもっても、ちょっとしたことから明らかなり、いずれ天地鬼神万民も知れわたる。

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