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極意秘伝のはなし15

古流楊心神道流経絡之巻(下)

明星の殺(みょうじょう=水分(ツボ))は、大腸・膀胱の二府に当てる(下焦=排泄機能)なり。へそ上1寸と、これより水は膀胱に下行して前陰へ出、糟粕(不用物)は大腸へ行きて後門に出、これによって稠(きびし)く明星に当たる時は、二便覚えず出なり。大腸は右に位しており、後へ蟠(わだかまり=滞る)あるなり。膀胱は大腸に入り組みて、前に蟠いるところは陰交の地と知るべし。口伝あり。

水月(みぞおち=巨闕こけつ(ツボ))は、自流極意の大事の殺なり。一切の臓腑経絡分かれたるところなり。この水月は胃のなか、上下陽に当身する。これによって一切の殺はこの理をもって助けるべき神府をいう。これは腎心の性を受けたる気経をかたつとて生府なり。常にこの府は陰陽とも受け、万風を生ずる府なり。すなわち息絶えて少しの間、臓腑に止まり、見る内に空の如くなる府なり。この水月は活生はなし。先師も至らざるところの経なり。必ず慎むべし。口伝あり。

烏兎(経穴該当なし)の当身は両眼なり。頭の円は天に同じ。ゆえに天に日月ありて、陰陽がわかれる。人に両眼ありて事物明白なり。自流に両眼をさして烏兎ということ、日(陽)中には3足の烏ありて、月(陰)中には玉兎あり。これも陰陽なり。ゆえに烏兎と号す。口伝あり。
                     大江嶋右衛門 元貞(花押)
                     片桐 音之助 方矩(花押)

補足説明:楊心流は天和・貞享(1680年代)のその隆盛をみた、とされており、比較的古い柔術流派です。発祥地が長崎ということもあってか、経絡経穴と急所の関連など東洋医学の影響を多く受けていることが特徴の一つとされています。楊心流の活殺理論は、後に天神真楊流に引き継がれ、さらに講道館柔道がこれを採用したのでした。

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