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柔術と合気柔術における四方投の違い

四方投は大東流の中核技法の一つです。ですから、柔術・合気柔術・合気之術のすべてに四方投が入っています。同じ四方投ですから、見かけ上、大きな違いはありませんが、それぞれ位置づけがことなるのです。これに関する鶴山先生のメモを紹介します。

江戸柳生系合気柔術には基礎技法に四方投が入っている、一般的には終末動作として乱れた基礎動作(体捌)を修正させるものである。一方、小野派系柔術にはこの終末動作に類するものはない。それは四方投について両系統の目的意向が違っているからである。小野派系では終末動作として復習するような意識を持つ必要がない、と整理しているのである。
この目的意識の違いは、上級武士と中級武士の職務上の違いから来るのである、現代的な表現を用いると、第一線の武士と参謀本部付け後方任務の武士とでもなろうか。
さて、徳川時代は武士は身分上帯刀が許されていたため、刀術は必修科目であり、表芸と呼ばれた。一方、柔術は裏芸、つまり心得であるのが常識であり、柔術が得意などという(自慢する)ことはなかったのである。
大東流三大技法の柔術は鎧組み討ち、小具足等の技法から成っており刀法とは関係がない。合気柔術(江戸柳生系)は、すべてが太刀の動作に関連し、太刀の動き、使い方、体捌きの基礎技法として整理されている。また、騎馬で用いる短槍技法の基礎鍛錬法でもある。槍は手元(柄)を掴まれたらダメである。基礎鍛錬法は杖の操法から始まる、敵の杖(短槍)を取って我が杖(短槍)となす、我が杖を掴まれたらこれを外す。これらの中に四方投の捌きが入っている。騎乗槍法では合気杖を知らないと対応できないのである。一方、小野派系には棒術や槍操法があるが、これは歩行武士の技法であって、相手の力を利用するというより、自己鍛錬による気力の充実を優先するのである。
かくの如く、同じ四方投でもその理合は全く違うのである。

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