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史伝西郷四郎5

「史伝西郷四郎」の昭和58年8月20日である。本の編集、基本原稿は昨年末であり、今年は出版社のみの取りまとめであることは、出版物経験者としてよく理解できる。この著者(牧野登)は私の「護身杖道(昭和58年1月20日発行)」を読んだであろうが、参考資料としては間に合わなかった。この本では、禁を破って大東流の歴史と構成を紹介したが、時宗氏の主張するものとは全く異なっている。「図解コーチ合気道」も「護身杖道」もポケットサイズ(文庫本)であるので、これらの本に気づかない柔道家が多くいる。多くの柔道家は意外と研究心がないからである。西郷四郎は「柔道の関係者」であるから今後「史伝西郷四郎」を通じて大東流に関心を寄せる者もいるかも知れない。これら2冊は、大東流・合気道関係者は誰でも知っており、これを読まなければ一人前ではない、と言われる時代がいよいよ到来してきたのである。
「個人の技では武術はせいぜい10人ぐらい、ペンの力は1万人を相手にできる。」と海軍の浅野正恭中将が大坪先生に語ったと、大坪先生から聞いたことが思い出される。ともかく、仕事の合間、合気道指導の合間に3冊の本を発行したが、「図解コーチ合気道」から10年を経てやっとその効果が出てきたようだ。最初は3年ぐらいで私の考え方を全国に周知できると思っていた。しかし、その効果はあまり感じられなかったが、やはりあったのである。出版社の選び方も偶然とはいえ、日販・東販の両方に入っている成美堂で良かった。また、小型本であった(当時は私の意に添わなかったが…)ため、普及力の点(廉価)で良かった。立派な本にしても1回限りでは、本を出したという実績だけで、効果(影響力)はないだろう。息長く続けられる(再版される)ものが、他のものと比較してよい結果に結びついたのである。日本伝合気柔術、大東流三大技法の将来は非常に明るくなってきたことが「史伝西郷四郎」によって立証されることになった。

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