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秘伝・合気道 堀川幸道口述 鶴山晃瑞編 16

恩師武田惣角先生も“気”についての説明は「無形の理」と似たようなことを言われました。
「合気の気は、形がないのだよ! 臭いもない、味もない、聞くことも見ることもできないのだよ!」合気の字義を考えますと「気を合わせる」だけの意味にしかなりませんから、これを基にしても合気道の実態はますます分からなくなります。大東流には気合技法と合気技法がありその操法は全く別のものであります。基本技法である柔術は肉体鍛錬(気合練坦)、合気は気錬鍛錬(養気練達)でこの割合は7:3となっております。この点、諸流派柔術が内勁鍛錬(五臓六腑)を主眼としているのと本質的な違いがあるようでございます。
また、宗教や神道修行と混同して合気には「気放、気発、気流、気収、気充」の五気の錬成法があると説かれる方もいるようですが、大東流合気柔術の内容は単に五気の錬成法ではなく、外勁の養気錬成法で、気錬り養成法とするのが適切であります。
武田惣角先師のお言葉に
「海風か、ピューピューと高鳴を聞きて
波浪が、岩に激突するのを察知し
天空地の穏やかなるを見れば、湖面の水盤なるを知る。
何ごとも察知(予見)することを知らざれば、
覆水は盆に復せざるを知るなり。」とあり、先生は非常に予見力の高い方でした、真言密教の修験者のようで一種の霊感力も持った方でした。私自身は、まだまだ修行が足りませんので武田先生が持っておられた予感力はありませんが、この武術のお陰で今でも元気に過ごせております。

解説 武田惣角から久琢磨が免許皆伝を受けた時の皆伝の口伝に「合気陰陽法之事」がありました。合気陰陽法とは、合気には「陰の合気」と「陽の合気」があるということです。
「陰の合気」とは、江戸柳生系の躰術(合気柔術)に内包される技術で、植芝盛平や久琢磨の技法であり、
「陽の合気」とは、小野派系の躰術(柔術)に内包される技術で、武田時宗、佐川幸義、堀川幸道、山本角義、吉田幸太郎などの技法です。
「陽の合気」は、堀川先生やその門人先生方の技を見るとわかるように、筋力(腱や靱帯を含む。)を相手に伝えることで、相手をコントロールする技法です。自信の鍛錬によって強力なパワーを発揮でき、見かけも派手で、映像映えすることから、皆さんがあこがれる技法だと思います。一方、「陰の合気」は基本抜力系の技法ですから、「陽の合気」のような派手さはありません。ただ、この分類も構成上の区分であって、実際は陰から陽へのグラデーションとなっているわけですから、陰陽どちらの要素が強いか、といった差でしかないのです。

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