四方投7
(承前)
2受容(じゅよう)法身(立合)
完全無欠の自性法身の完全性を解いて、大日如来の性格を4つに分けて「阿閦(あしゅく)・宝生(ほうしょう)・無量光(阿弥陀)・不空成就」の四仏にした、これを受容法身という。
大東流では、この受容法身を立合四方投としているのである。
3変化(へんげ)法身(半座半立)
密教でいう変化法身とは、歴史上に実在した釈迦のような存在をいう。釈迦は単なる説法者ではなく化身して現われた法身なのである。
大東流では、半座半立は御殿術との位置づけである。これは、徳川時代に柔術を御殿向きに変化させたもので、その技法がすなわちサムライの法身(規則・規範)であり、武士の鑑であり、武技の神髄である。
4等流(とうる)法身(後捕)
等流法身とは、非常に密教的な仏様である。法身が等しく流れるということは、我々は抽象的な仏様には近寄りがたいけれど、自分にいろいろなことを教えてくれたり、世話を焼いてくれる人も法身である。それだけでなく、嫌な思いをさせられたりする隣の人も法身なのである。犬や猫に法身が現われることもある。あらゆるものが大日如来の現われであり、衆生の能力に応じて、様々な形に変化し、何らかの真実を伝えようとして出てくるのである。「現実世界に存在するものは皆仏様である。」という密教独自の考え方である。
大東流では、後捕がこれに当たる。武術的には敵に後からからまれるなど原則的におかしい。しかし、実際にはどこから攻めて来るか約束は出来ない。仮に後から攻められても、慌てず処理する心得として覚えておくことが役に立つ。等流法身、すなわちいたるところに仏様がある、を大東では「あらゆる所から敵が来る」と考えるのである。(続)