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大東流の口伝29

さて、体幹部で意識したい軸は、肩関節から股関節辺りまでの垂線、です。肩関節の下は肋骨があるだけで物理的に支える構造にはなっていませんが、この軸は、腕の重さを受け、頭を横に倒したときの重さを受ける位置に仮設するということです。この軸は股関節の上にありませんから、下半身の軸を踵-股関節軸とした場合、上半身との軸にズレが生じます。このズレを筋肉でつなげるという、文字どおり力技で対応する方法(かなり有効です。)もありますが、基軸之事からすると、つなげたい。そこで、上半身を少し折ることによってつなげるのです。完成形は、一見、体が折れ曲がっていて弱そうですが、実は強いのです。新陰流兵法では深檐勢(しんえんせい)の構えや、本伝一刀両段の二の切りの形が該当します。日本伝合気柔術では呼吸体操の形の中に頻出します。

ここまで、意識すべき代表的な軸を紹介しました。基軸之事の教えには、まだ先があります。

既述の軸は、自分の体の中に意識して作るものでした、これらの軸は自立的なもので、相手との関係性は問いませんから、いわば柔術テクニックの一つになります。

そして、相手がいる場合は、さらなる展開ができるのです。
相手と直接・関節を問わず接触している場合は、我がコントロールして相手の体の中に軸を作ってしまう、我と相手の間の空間に軸(点)を作ってしまうなど、相手との関係性の中で軸を作り・活用するという展開です。ここには、陽の合気の要素が入ってくるということになります。また、合気封之事という口伝とも関係があり、相手の施技に対し我の基軸を用いて封じるという術理があります。

なお、この軸を作るということは、我が安定することとは限りません。自分の体内に軸を意識し安定する基軸もあれば、軸はできているけれど不安定な状態となる基軸もあるからです。自分の体外に基軸する場合は、軸にゆだねるわけですから基本不安定になっていることが大事です。

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