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合気之術の思想背景5

さて、私(鶴山先生)の視点で呉子から参照したが、ここで、呉子の全体構成と要約を「中国古典文学体系4」金谷治の解説(P516)から引用してみたい。

第一の図国(とこく)篇は、国を図るという篇名が示すように、戦争論の基礎としてまず国政の問題を論ずる重要な篇で、孫子の場合と同様に人の和を重視し戦争の起こる原因を考えるなど、戦争そのものについての深い省察がみられる。
第二の料敵篇は、敵情を調べるという題意で、魏をとりまく六国の状況とその対応策を述べるほか、一般的に必ず戦うべき敵情や必ず避けるべき敵情などが語られ、
第三の治兵篇は、身方の軍隊の整備に関して述べたもので、法令賞罰の厳正や教習の必要が説かれ、
第四の論将篇は、将軍についてその重要性や良将としての要件、敵将の見分け方と対処の仕方などを述べている。
第五の応変篇は、変に応ずるというその篇名が示すように、戦陣での様々な状況に応じての対処の仕方を具体的に説いており、最後の
第六の励士篇は、士気を高めるのに賞罰以上のものがあることを説くが、ここでは武候と呉起との問答だけでなくその行動も示されていて、他篇の体裁とは違った一連の物語となっている。
陽明学の開祖である明の王陽明は将軍としても大功をたてた人であるが、『孫子』と『呉子』の違いを述べて「孫子は要するに軍略家で実戦家ではないが、呉子は実戦に詳しい」という旨を述べたという。『孫子』が実戦にうといとは思われないが、両者の内容の理解について参考になる言葉であろうと思う。

なお、「賞罰以上のもの」とは、①戦場において号令・指揮を下すと兵はそれを聞くことを楽しみとし、②軍を出動させると兵は敵と戦うことを楽しみとし、③武器を交えて敵と戦うと兵は戦い死ぬのを楽しみとする、の三者である。

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