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極意秘伝のはなし30

11所作の勝ち
身のかたちを作ることを所作という。技を習い心を正して、心でつかう機会、自分と風和のように少しもとどこおることなく、形や色のつくろいなく、生まれつきのまま、すらすらと掛かり、引くときも敵にしたがって動かず、取るべきところは捕り、放つべきところは放し、体の力みをなくして、自分と掛かることを所作の勝ちというのである。
技で勝負するとき、力んだり、すくんだりするのは、気で負けている。心をもって気を移し、気をもって心を助けるというけれど、所作に関わるときは、自分より下には勝つけれど、同レベルの者には所作に気をとられること、これは一つの負けである。身のかたちを作ることと体の力みをなくすことは、体の用い方の見方のことでもある。所作の習いは風和(心法と技法)で口伝する。
 
12所作の負け
これは、大方は前の「所作の勝ち」に記したが、負けを教えて、いよいよ勝つを教えるため、また、ここに著わすものである。例えば、所作が悪くても相手が下手なため勝利を得れば、自分の悪いところを知らず、所作も技も良いと思って、上手と対しても前の柔を使って負けるのである。およそ所作は事前のものである。人に掛かるとき、形を直すべきところは事前につくろっておき、所作にかかわらず心で掛かるのを専らとするのである。この理を考えなくて、技の質を上げることだけ考えて掛かることを所作の負けというのである。これ、常に心の習いが足りないからである。これもまた、風和で教えることである。

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