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新陰流兵法目録事12

補足説明:天狗抄は石舟斎が形としてとりまとめたものですが、元々は流祖上泉伊勢守からの口伝の勝口でした。具体的には、陰流「燕飛」に附随した勝口で、燕飛の裏技とされていたようです。絵目録にあるように、高林坊・風眼坊・太郎坊・栄意坊・智羅天・火乱房・修得房・金比羅房の八つの技法を天狗抄と名付け整理したということです。天狗抄の太刀は秘中の秘(他見禁止)でしたから、この当時形の名前も記されていません。なお、伊勢守の影目録「燕飛」には、浮舟(燕飛六箇之太刀の最後)の次に、獅子奮迅・山霞(さんが)の絵が掲載されており、「燕飛」に附随する勝口はいろいろあったことがわかります。

では、天狗抄についても、その技術論にさらっと触れておきます。
花車は、くねり太刀と折り敷く転打の形です。自身の不安定と安定をコントロールし、重心の移動を活用します。
明身は、打太刀の左腕を制する形です。呼吸法と体の一体化、そして重心の移動です。
善待は、小さな動きで打太刀の左拳を押さえる形です。体の一体化と重心の移動、そして「てこの原理」の活用です。
手引は、くねり太刀(花車とは入り方が異なり)の形です。体の一体化と重心の移動、そしてひざのコントロール(猿廻)です。
二刀は、二刀破りの形です。二刀で打ってくる敵を転打から折り敷きます。体の一体化と重心の移動です。
二刀打物、これも二刀破りの形です。投げ太刀を封じ打太刀の左拳を押さえる形です。体の一体化と重心の移動です。
乱剣は、左太刀の形です。奇変(腰の向きを変えて)して勝つ新陰流の極意の形です。
二人懸は、多敵之位を前後敵の形として象徴したものです。

なお、「二刀・二刀打物・二人懸」の3本は秘中の秘の中の秘でした。
こういう秘技が習えることに感謝です。さて、技術論をさらっと、といっても、重複する内容ばかりではないかと、指摘されそうですが、そのとおりなのです。身勢が定まっていれば、技は簡単に成立するのです。(実戦があったとして、そのように使えるかは別ですが・・・)姿勢の問題と言ってしまえば、一言で終わってしまいます。いろいろあっても最後は姿勢なのです。

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