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「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」7

兵法の 上手にならば 転(まろばし)ぞ 富士の高嶺に 名をあげよ
兵法の 上手にならば 丸橋(まろばし)を 立居につけて 習うべきかな
補足説明:兵法の達人・新陰流兵法の極意は轉(まろばし)の心境にある。極意を簡潔にまとめることは難しいことですが…、敵の動きに対応して円転し自由自在に働く剣法のこと、といえるでしょう。「まろばし」については、「変動常に無く、敵によって転化す」ることを丸い石に例えて説明しています。敵によって転化するということは、丸い石を高山の上から転がせば、滞りなく勢いが増し、それを防ぐことは出来ないようなものだ。流祖の例えでは「風を見て帆を使い、兎を見て鷹を放すが如し」としています。これを徹底すれば、構えるという心もない、精神的な無構えが身体と剣の操作を活かすのである、と教えています。鶴山先生も「大東流には構えがない」心で応ずるのだ、と語っていました。江戸柳生系合気柔術の極意に流用されていることがわかります。
さて、新陰流兵法ではこれを象徴した勢法に転打(まろばしうち)というものがあります。初級の伝授の太刀にして、皆伝極意の太刀でもあります。敵がどのように打ってこようが、我は真っ直ぐ自分の正中線を斬り通すだけ、という単純な太刀ですが、単純だからこそ難しいのです。

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