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口伝の効用

口伝とは、師が弟子に奥義などの秘密を口づたえで授けることでした。
「口伝」という記事で「単語で終わる簡単なもの」の例を書きました。実は、これらの単語にも付随する説明がありその部分も口伝になるのです。

例えば、大東流の最も重要な口伝の一つに「朝顔」があります。タイトル「朝顔」、その内容は、「手の形を朝顔の花に見立てていて、こんなふうに手を張って・・・」と説明が続くのです。
ところで、書きことばと話しことばでは頭の使い方が異なる、と聞いたことがあります。一般に書伝の方が優れているように思われますが、口づたえも「竹取物語」や「平家物語」といった口承文芸(こうしょうぶんげい)があるように、声に出して伝えることで、多くの人の推敲がなされ、わかりやすく整理・洗練されるもので、一概に書伝の方が口伝より優れているとも言い切れません。

口伝には数代にわたる先師の工夫改良が積み重ねられており、その結果、誰が見ても合理的、かつ、洗練されていて、魅力ある技法・組形となっているのです。他の諸芸でも同じかと思います。
また、口伝とは師が直接各人の個性に合わせ手直しすることでもあります。

最後に、口伝に関して鶴山先生が好きだった言葉を紹介します。
「口伝は固(もと)より其の師の口伝にして、其源、先師より出でるといえども、時歴、人違い、師もまた一人にあらず」心形刀流 松浦静山

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