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極意秘伝のはなし36

20残心の評
他流派でいう残心をみると、勝負に心を残せ、とだけ教えているようだ。
心の体用を知らないときに、このように教えると、心がくだけて、かえって心を残すことが出来なくなる。心を残せ、というけれど人には二つの心はない。一つしかない心で、心を残して勝負しようとすると、心は二つになってしまう。このようになったら、技は技、心は心と分かれてしまい上手くいくハズがない。盈虚(えいきょ=満ちること欠けること)、有無、動静、上下、左右、飛揚(高く飛び上がる)、翩翩(へんぺん=軽やかにひるがえる)、自由自在になる者は心だけれど、理を失うときはどこかに偏ってしまい自由にならない。心で心を残せといえば、偏りこだわってしまい自分と自分の身を害することになってしまう。だから、心は心にとられ、技は技にとられ、生死危難のときにあたって、何を主として勝負をしようというのか。これは、他流派をあざけっているのではない。当流の理を教えるため引いたのである。
 
21常
当流の柔には、常ということを残心に用いている。これまで述べた条々を理解し、技を放れて心の体を見得し、中和の理を心に備えて、平常毫末(ごうまつ=毛の先、ごくわずか)も理気を放すことはないように。当流の大事であるから大概を書いておく。重々口伝あるべし。

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