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「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」2

五箇の身の 位わするる ことなかれ 兵法つかう 人の根源
身はひとえ 敵の拳を 我が肩に 比べて拳 盾にするなり
いつもただ 左のひじを 伸ばすこと 忘れはしすな 忘れはしすな
先のひざに 身をもたせつつ 後のひざを 開くことこそ よき左足なり
補足説明:この四首は、新陰流斬相口伝書事(石舟斎が流祖の口伝を整理体系化した目録)の冒頭の項目を教えています。今でこそ誰でも内容を見ることが出来ますが、当時は秘書中の秘書、限られた高弟しか見ることは出来ません。そこでこのような和歌にして要点を伝えた、ということでしょう。
流祖上泉伊勢守信綱の時代は介者剣法の時代ですから、そのための刀法・身勢(沈なる身)を教えています。以下、概説します。

 身懸五箇之大事
偏身(ひとえみ=半身)になること
             =攻撃を防ぐ場所が少なく、我の太刀も伸びる
敵の拳を我が肩に比べること
          =拳の位置を敵の肩より低くし、敵の攻撃を限定する
身を沈(低く)にして拳を盾にして捧げること
   =身を沈め、縦筋の太刀を前に差し出し盾とする(刀中に身を隠す)
前のひざに体重を掛け、後のえびら(ひざ下)を開くこと
                       =下半身を固定すること
左のひじを屈(かが)めないこと
             =ひじを外に張ると力みが発生し力が通らない

なお、尾張柳生家初代の利厳(石舟斎の孫)は、この身懸五箇之大事(昔の教え)について、このように身を作ることは、心身の守りを主とし、狭く固まり詰まることから「悪し」と批判し「直立(つった)たる身の位」を提唱し、勢法を改変(内伝)しました。
次に、参考として、「直立たる身」における五箇身「中庸五箇身」を紹介します。
直立身 四方正面
中段より上は嵩をとるなり
     =敵が中段より上から掛かって来たら、その上から被せ打つこと
足をへその下より使い、土つかずにて踏むこと
 =足は臍下から伸びている(股関節を意識せよ)、土踏まずで踏み
 (つま先で蹴ってはならない、ここからつま先を浮かせる歩きが提示され
  た)、鞠を蹴るように、鷲が羽ばたきしながら歩くように歩むこと
位を放って打ち込む時、筋を外さぬこと、中筋之事、合し打ちなり
                      =雷刀からの打込みの心得
打込みてなおも始めの如く直立之事、三重五重の意にて、尽きぬ意、また取上げの意
 =三重五重と打ち込むが身勢を変えないこと、打つとき取り上げるとき流
  れるように使うこと、そこに残心がある


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