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合気柔術の技法4

また、日本武道の特徴である、侍は先に手を出さない、懸対懸の立場をとっていない。先に「目潰し」するのである。この考えは、侍武芸には無い原則である。ここに合気柔術が管理者武芸としての存在価値がある。最初から駆け引きを教えているからである。合気柔術の中伝には、「油断あるまじき」という連続返技がある。これこそ管理者武芸の常法である。戦術と戦略の兵法が含まれた技法なのである。その第一歩が「裏拳にて、目潰しする」になる。ここでお小姓衆には正義を教える。
まず、正しい姿勢、一般人に手を引かれただけで姿勢が崩れるようではならじ、と教える。次に、第一か条の序破急を教える。

 正しい姿勢の相手に目潰しを入れ、右手を取り、右ひざを開いて、左手で相手の右手を押さえる。この押さえは両足先を立て(つま先立ち)両かかとの間に腰を落とす練習をする。

 第一か条の押さえ技はべた足ではダメ(植芝合気)である。侍がお小姓衆の家(家老屋敷など玄関がある家)を訪ねてきた場合、相手は家の外なので、帯刀し立ったままである。一方、こちらは正座で対応しなければならない。相手は刺客かも知れないから、いつでも転身できるよう、半座の姿勢で対応する必要がある。このため正座に見えるよう腰を落とす練習をしておくのである。この時は袴を着けているから足は見えない。子どものときから袴を着るのはこうした理由もある。

 相手が右手を押さえる(第一か条)。左拳で当身、左手で相手のひじを押さえ、右手は返して手首を掴み返し、序の形と同じ右側に押さえる。

 これは、序の形の返技なのである。こういった技を最初から教えるのは、管理者武道だからである。

 相手が小太刀(正座だから太刀はない)で打ってくるのを押さえる。この場合は、当身の必要はない。

このようにお小姓衆向けの技法は、序破急の三段階にわけ指導されるが、技よりも姿勢、侍の心得、殿中での正座の必要性など、躾け教育を重視しているのである。現在の植芝合気道の技法は急に似ているが、そこには基本理念が全く理解されていない、形骸的なものが残されているだけである。昭和59年1月期の講座は、この序破急を説明した。

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