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日本伝合気柔術 技法稽古に入る初学者のための基礎知識10

武士の抜刀3要件
徳川時代は、武家諸法度や各藩法の趣旨から容易に抜刀対峙する、ということは出来なかった。家や藩にとって不名誉であり場合によってはお家断絶の処分を受けた。したがって、抜刀3要件=主命・合戦・切腹以外で抜刀することは事実上出来なかった。そうすると、抜刀せず対応する必要があり、士風の涵養・子弟教育が必須となっていったのである。結果として裏芸(柔術)の重要性も高まったのである。
 
形稽古=疑似体験学習(シミュレーション・スタディ)
日本伝合気柔術の技法修練は各種シチュエーションを想定した組形による形稽古(=疑似体験学習)により行なう。この稽古法は、動作・技法(術理)を安全、かつ、正確に修練・体得出来る方法である。そして、その継続修練によって“身体強化”がなされるとともに“気配り・思いやりの心・集中力・バランス感覚”が養われるのである。
形稽古により、感性(五感)を磨き、五感に意識を注ぐ(傾ける)ことで集中力を高め直感力を高めるのである。直感力は“形・構えにこだわる”“思い込み(力には力で対抗するなど)”などの先入観(固定観念)があると、発揮できない。先入観を形稽古により排する(=頭を説得する)のである。
ところで、制圧技はそのほとんどが“極技”であることから、形稽古において怪我をさせない・しないための“集中力・気配り・思いやりの心”が必要なのである。また、稽古に当たって、道着・場所・時間の設定(制約)も集中力の醸成に役立つ。
技・形・動作だけの目先の学習で終わらないためには、技法に内包された術理・教訓などの極意を自得すべく稽古する必要がある。これら技法理論は本来秘伝であり、他者に解読されたり盗まれたりされないために稽古は非公開・見学不可であった。
日本伝合気柔術の技法は、侍の作法(殿中作法等)の疑似体験なのである。先制攻撃はしないこと・止めを刺さない(誰何)ことなどを実技を通じて学ぶ、精神修養とも言えるものである。技法修練により、敵が付け入る隙がなくなることで、威嚇の必要もなくなり、さらに人格を磨き風格が備わった武士になれるということである。

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