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序破急のこと(上)

大東流は、上・中・下の三段階の構成になっている旨「秘伝技のこと(上)」で紹介しましたが、「中」の区分に当たる江戸柳生系合気柔術には、序破急という、三段階の技(稽古法)があります。この整理法は、新陰流兵法から持ち込まれたものだと思われます。例えば、上泉伊勢守がとりまとめた勝口(技)である二十七箇條斬合は序破急で整理されています。また、江戸柳生系の伝書「新秘抄」では序の太刀(三学)、破の太刀(九箇、天狗抄)、急の太刀(燕飛)とあります。大東流合気柔術においては、本稿の技法の他、返技の序破急が有名なところです。では、新陰序破急と題された鶴山先生のメモを紹介します。

 半座にて左より左片手を持たれる
この左手持ちは、左手技法が完全にマスターできれば、右手は練習しなくてもできるようになる。故に大東流は左手持ちから始まる。このことは徳川時代に生まれた古流であることの証明でもある。徳川時代は左脳思考であった、すべて右手で行う、そこで右脳鍛錬のため左手持ちから始まるのである。これはインドの仏教思想とも関係があると思う。
ここで手解きが入る。大東流の手解きは他の柔術とは違っている。他流では、持たれた左手を右に返して手解きし、解いた手刀の反動で左に打ち返すことから始めているが、大東流ではさらに右手でシゴク、これが大東流独特の技である。植芝合気でもここまではある。藤平光一がよく使っていたが、序の形である。
補足 「右手でシゴク」とは、右手で相手の右手(掴んで来た手)に触れることです。このことにより、抜手(手解き)が容易になり、両手が使えることから、自在な捌きが可能となります。

 半座にて掛手となる
掛手は「破」の形となっている。これは先に手を出すことである。新陰流兵法のサソイ(左足)が入っている。

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