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合気二刀剣のこと10

さて、大東流の中でも合気二刀剣は異彩を放っています。いわゆる剣術の形が手解きから秘伝まで用意されている。鶴山先生が語った「大東流には剣術がない」という言葉と矛盾しているように思えますが、ここに合気二刀剣の秘密、存在意義があります。

ところで、これに関連して、大東流合気柔術琢磨会総務長森恕氏が月刊「武道」に連載していた大東流合気柔術(琢磨会)第17回-同時打ちと最後の固め技-(2015年8月)において、久琢磨の説明を紹介しています。「久琢磨から、合気二刀剣の剣技を柔術に応用したときの技について教授を受けた。(中略)『両手の動きに時間差をつけてはいけない。武田先生は、この技の二刀の動きについて、交互に打つのは芸者の太鼓、大東流は同時打ち、といわれていた。』(以下略)」

惣角の言葉にあるとおり、合気二刀剣とは両手同時打ちの鍛錬及び操法の教えなのです。その原形が二刀であることから、これを示し、合わせて秘技であった二刀剣の使い方及びそれに付随する教えを原典として後世に伝えた、ということです。この両手同時打ちというのは代表例として使っている言葉であって、打つ(斬り・当身)動作・掴み動作・蹴り動作などを含み、要するに2方向の力を同時に敵に伝えるという教えです。具体的には、柔術で多用される多段当、合気柔術の二刀連当、二刀蹴当、合気之術の二刀剣陰陽などがあります。いずれも大東流3大技法の形の中に溶け込んで通常使用されている技法ですが、その意味と意義がわかっていなければ、宝の持ち腐れになりかねません。そうならないための戒めとして合気二刀剣の形がある、とも言えるでしょう。(完)

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