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左のひじを延ばすべき事

鶴山先生の合気柔術1か条は左ひじをしっかり伸ばして捌くよう指導されていました。このことに関するメモを紹介します。

合気道技法の原形である合気柔術は柳生流柔術と称されたものであり、新陰流兵法(江戸柳生)をルーツとしており剣術の体捌きが根底にある。この中に「左のひじを延(の)ばすべき事」(進履橋)があり、これを重要視したことから、合気柔術の中にその鍛練法が組み込まれ今に伝わっている。
では、なぜ左のひじを伸ばすために体術として鍛錬する必要があるのか?
小野派系では、木剣で形稽古をする。力を出せるところはよいが、寸止めの見切りが上手かどうかの価値判断となる。全国どこを調べても木刀なのである。下手な者は止めたくても止められないが、上達すればするほど、年期を入れるほど、寸止めが習慣となって、癖になってしまう。そこで、実戦に使えるようにと、据物斬りの練習をする。これは動かぬ相手を斬ることである。また、素振り用の太い木刀があるがいくら重い木刀を振っても、物の重さであり、当たった(斬った)手応えの回答にはならない。藁の束を切っても本物の肉体を斬る手応えは覚えられないのである。
柳生流柔術の「左のひじを伸ばす」ことがこの回答なのである。この鍛錬は相手との距離(間合)を覚えることも入っている。これは対多人数敵を考えた太刀捌きのためで、据物斬りのように完全に相手を斬り裂くための刀捌きは必要としないのである。
江戸柳生は将軍の剣であり、無刀、活人剣の心持ちで、相手の命を必要としない、相手の小手を斬れば(取れれば)よいのである。しかし、剣道の様に当てればよいのではない。小手を落とすためには、左のひじが伸びていなければならないのである。「左のひじを伸ばす」ことは流祖上泉伊勢守が新当流の技法から新陰流に取り込んだものであった。

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