見出し画像

山嵐2

さて、ここで小説「姿三四郎」のあらすじを作家尾崎秀樹(おざきほつき)による紹介文から引用してみる…
主人公の三四郎は、4歳のときに母を失い、12歳で父に死に別れ、17歳で会津から上京、1年ほど辻車の車夫をしながら苦労した後、心明活殺流の門馬三郎の門をたたくが、絋道館の矢野正五郎の闘魂の激しさに魅せられ、正式に下屋隆昌寺の矢野道場に弟子入りし、柔道ひとすじにはげむ。
矢野正五郎のはじめた絋道館柔道は、それまでの柔術諸派のありかたを止揚し、大乗的な見地に立つ近代的な武道を志すものだった。鹿鳴館時代の欧化主義的風潮に抗し、柔道に象徴される民族的な誇りを回復しようというのが、そのねらいでもあった。
三四郎は柔術諸派の反目と嫉視の中にあっても、毅然として修行をつづけ、八谷孫六の道場開きでは門馬三郎を隅返で、警視庁の模範他流試合では良移心当流の村井半助を山嵐で、それぞれ破る。豪快な山嵐が火を噴くところ…『三四郎の払われた右の足の裏は半助の右の足首にぴったり着いて、飛び込んだ肩に23貫の肉塊を担ぐと、相手の足首を力の限り払い飛ばした。小兵な三四郎の頭上で半助の足は遙かの空を蹴ると、体は三四郎を中心に車輪のような半円を描いて、ずしんと畳に落ちた。
山嵐の大技である。半助は首の骨をしたたか打った。頭から谷底に飛んだ心地でふらりと起きる。
道場中のどよめきが、遠い潮鳴りのように半助の耳にぼんやり聞こえる。そう思った瞬間、三四郎の二度目の山嵐が襲った。』
さらに半助の高弟檜垣源之助と右京が原で対決し、その弟、鉄心や源三郎の檜垣流空手とも闘う。その間に半助の娘乙美や彼女の異母姉である南小路高子などとの色模様もからむ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?