合気柔術と整体効果(続)(下)
この他、中伝技には相手を腹ばいにして極める技が多い、これは背骨の矯正と腎臓の強化に効果がある。特にサムライは髷(ちょんまげ)の関係で箱枕を使うため背骨の曲がりが多いのが徳川時代の特徴である。これで腰曲がりがあると、腎臓が悪くなり長生きできないという。なお、腎臓は温めて休ませるのがよい。
受身の練習、合気柔術では受身は「時と場所を選ばず」とされ、パターン化した受身の単独練習はしない。その場に応じて自然にころがるのである。これによって無理のない自己整体(背骨回りのほぐし)ができ、脳卒中の予防効果が期待されるのである。
合気柔術では相手の両手を取って極める(交差させるなど)技が多い、このとき導引術でいう陰門陣(郄門=げきもんのツボ)を押さえる。同じツボのことを男性の場合は陽門陣というが、この名称は合気柔術では使わない。郄(げき)とは、くぼみ・割れ目を表わし、郄門は尺骨とトウ骨の隙間を表わしているのである。これを押さえることで、腕を封じるとともに、回春効果が期待される。動悸や睡眠障害を改善し血中の熱邪を除去するのである。この腕転法は疲労をとるため、自己指圧で行うとよい。
このように、江戸柳生系合気柔術にはヨガや導引が回春法として大幅に導入されている。大東流合気柔術の特色であるが、肉体的な疲れや老化防止のための単なる回春法ではなく、この状況で考える、という発想法の訓練の意味があるところにポイントがある。
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