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合気道「愛の武道」とは

集団内における複雑な社会的環境が脳を急速に進化させたとする「社会脳仮説」というものがあるそうです。人類は、音楽的なコミュニケーションなどを通じて脳の大きさをゴリラの3倍にした。すなわち、身体の動きを他者に同調させ、リズムに乗りながら全体を調和させる、自己抑制をして場の雰囲気に合わせるこのようなコミュニケーション能力を磨くことによって、人間は高い同調能力を獲得した、とされています。

武術では、この同調能力を利用しています。利害は一致しませんが戦う場を共有した瞬間から、ヒトはある種の同調能力を発揮してしまうので、これを利用して優位に立つのです。例えば、こんな実験で、ある程度確かめることが出来ます。受手が仕手の片手を諸手取りします。仕手はこれを普通に捌こうとしても動けません。そこで、受手に「黄色いバナナの映像」を頭の中に浮かべてもらい、仕手も同様に思い浮かべると、あら不思議仕手は簡単に片手を振り回すことが出来ます。思い浮かべることは何でも良いのです。「暖かいお風呂」「○○をしたい。」・・・など、相手の考えを読みそれに同調すれば、崩すことが出来るのです、実用することはほぼ不可能でしょうが。他には、相手と接触するだけで反射とはちょっと違う同調反応が起こります、力みや緩みが相手に通じたりすることなどです。これは微細な感覚なので意識していないと感じ取れませんから、修得には慣れと経験が必要です。

さて、植芝合気道は「その体術は人間相互愛を基調とする合気実修のためのもの・・・人間愛を護るべき・・・であって、愛なくしては何の技かや・・・」(財団法人合気会認可申請上申書より)とするものですが、この人間の高い同調能力の一面を現わしている(活用している)とするなら、それはそれで一つの解釈とも言えるのかも知れません。

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