「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」27
打つとても 打つと思わず 気を捨てず 探しあらため 探しあらため
補足説明:武術的な体の使い方は、一朝一夕には身につきません。慣れ親しんだ動きや本能的な動きが優先されるからです。意識的な反復稽古によって、意識しないで武術的な体の使い方が出来るように探求に探求を重ねる必要があるのです。そうすることによって、自己自身の身のこなし(所作)が完成するのです。
兵法は 槍なぎなたや 太刀かたな 同じ雲居の 月こそ見れ
諸道具を 皆兵法に 使う事 行住坐臥に 忘れはしすな
兵法は 太刀に限らぬ 事ぞかし 外の物の事 よく習うべし
補足説明:「外(と)の物」とは、剣術以外の武術の事を指します。鉄砲伝来後、江戸初期には剣術が武術を代表するものとして兵法と称するようになったことから、そのように名付けられたのです。
『兵法截相心持の事(柳生宗矩)』には、「槍・長刀・十文字・鍵槍・小太刀・諸道具ともに、右の習い心持ちをもって当流に用い候。いろいろの習いこれあると言えども、別に用いず。…」とあり、日本伝合気柔術に引き継がれているシステム武術の発想が読み取れます。諸道具にはそれぞれ特長がありますから、対応に当たっての留意点は細かく書伝されていますが、ポイントは太刀と同じ、流祖が発見した原理原則にのっとればよい、との教えです。
なお、ここでいう「外の物」とは、諸道具への対応に限定されません。例えば『外の物の事(柳生宗矩)』には、「用心の心持ち、視・観・見・察、この四つを専らと忘れまじき事」とあり、視(耳で聞く)・観(目をふさいで考える)・見(目を開けて現在を見る)・察(推察する)という心の下作りが必要と説き、「人数を大方見積もる」方法、「馬上の心得」など留意事項が細かく書伝されています。
すなわち、太刀以外の「外の物」に習熟し、日常生活においても基本的なこととして、万全を期すべし、という教えです。
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