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大東流と無刀取り3

さて、「無刀取り」とは新陰流兵法の有名な技法です。
流祖上泉伊勢守が柳生石舟斎宗厳に無刀取りの完成を託し、宗厳が無刀勢・手刀勢・無手勢の3勢法(奪刀法)を考案完成し、新陰流第2世となったのです。そもそも「無刀取り」自体は新陰流兵法の勢法の中に組み込まれており、仕太刀が手で捌けば打太刀の太刀を取れるという技法はたくさんあります(伊勢守の奪刀法)が、これを鍛錬形として象徴的にとりまとめたのが石舟斎なのです。

ところで、柳生十兵衛三厳著『月の抄』に、「亡父の録に、無刀の註(注)なし。」とあるように、石舟斎は無刀取りについては、伝書の中では勢法の名称を含めほとんど触れていません。唯一、自身の創意工夫を記した『没玆味(もつじみ)手段口伝書』に無刀についての追記があります。この追加の極意とは、一の目付・一円・一真実無刀極意の3か条です。一方、石舟斎には武芸のあり方などを詠んだものが多く残されており、『石舟斎兵法百首』として有名です。この兵法歌の中で「無刀取り」ふれているものが数首あるので紹介します。(漢字表記にするなど読みやすくしています。)

 無刀にて 極まるならば 兵法者 腰の刀は 無用成りけり

 無刀にて 稽古鍛錬 取りえては 我が兵法の 位をぞ知る

 兵法を 工夫のゆえか 無刀にて 争い掛かる つもりをぞ知る

 兵法の 無刀なること 石の船 浮かまぬ技と 人や見るらん

 縛り者 斬るに劣らぬ 無刀さへ 十に五つは 取られぬるかな

 無刀(原文=手刀)をば 所望とあらば 取ってみよ
                                                                    斬られてもよし 苦しからざる

 無刀取る つもり位を 稽古して 小太刀の心 
                                                        玩味(がんみ=よく理解して)して知れ

 無刀さへ 斬りかねたらん その人の 刀に合いて いかがしてまし

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