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極意秘伝のはなし33

16心の負け
前述のように、習いを得て所作を放せと教えれば、敵に勝つ技を習い、それから放れろ、といわれてもどうやって勝つのかと心が屈し、芸を捨てる者も出てくる。だから、どれほど精を尽くし骨を折っても、心の勝ちを極めなければ、技と所作にとらわれるだけになる。自分より下の者には勝っても、強い者、技の上手な者は負けるから、心を収めることなく、自分を捨てようとしても、師も教えないし、いよいよ心の負けになるのである。心で負けと思ったら、もう負けである。

所作を放つ際の大事をよく習得して、所作を放ち、心の負けを見ることが肝要である。柔は教えである、心の勝負は自分自身にあるというのが師の教えである、心の負けをもって勝ちを見なければならない。負けをよく考えないと、勝ちは見えない、善をもって悪を見る、悪をもって善を見る、理をもって非を見る、理を見て我が心を磨かなければならない。勝つとの思いだけで敵を見ると、どうして負けが見えるであろうか。思い込みを捨てて理に基づかなければならない。負けをもって勝ちを考えること、常に忘れてはならない。よくよく工夫して口伝を聞くべきである。

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