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柔術と合気柔術(下)

惣角は実戦的なものにとらわれていた傾向があり、大東流柔術の免許皆伝者を別途探していたようだ、晩年に行き当たった山本角義のところにその言葉がいくつか残されている。
堀川幸道の合気柔術は大東流柔術第3か条以降の技法であって、柔術系の技法である。また、その教え方は、技とその変化のみで、何のためにこれをやるのか、といった思想は見られない。一方、時宗の柔術は、その本質を理解されていないが、下級武士の躾教育の形と古い伝統を残しており、この意味で正規の柔術である、といえる。

地の巻の柔術は第1か条と第2か条が基本で、そのテーマは大地にしっかり足を踏ん張った体勢での物事の処理能力、という点にある。そして最後に八方分身で締めくくっている。
人の巻の合気柔術は正面打1か条がすべての基本になっている。人の巻は世襲制を前提に世襲者としての宿命、不満等による不意打ち対応の技がその基本動作になっている。しかも、地の巻の技にいかにして勝つのか、が基本思想である。懸対懸の新陰流兵法がすべてであり、後半の奥伝秘伝は活人剣がモラルとなっている。現代における宇宙遊泳に近い心境を持たせる極め技は、明らかに武術とはいえないもので、世襲制におけるエリート教育のために作られた一種の帝王学と称すべきものである。
地の巻の現場第一線の管理者の技と、後方本部のトップマネジメントに必要な発想得るための技の違いでもある。いずれにせよ、当時の日本の叡智をノウハウとしてまとめたものが大東流の中に残されている。

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