娘と楽しむポケモンガオーレ ~水神アルセウス編~
“My best friend is the one who brings out the best in me.”
最高の友は、私の中から最高の私を引き出してくれる友である
― ヘンリーフォード ―
【憂鬱】
憂鬱である。梅雨はまだなのに、梅雨入りしたかのような気分になる。心が晴れない。
利休鼠の雨が降る…とはまさに今日のような天気の色なのか、それとも気分がそう思わせるのか。
そう…恐らくこんな気分になるのは快調に娘と獲得してきたターゲットが今はなかなか獲得できないでいるからであろう。
何もすぐ取れなくてもいいのであるがここまで取れないと…子供のゲームなのに…と少し拗ねてしまうのである。
この間に何も仲間に出来ていないのかと言えばそうでもない…チケットコースで獲得した☆3のジガルデは☆5になった。同じくチケットコースで獲得した☆5ダークライも愛でた。ゴースから育てたゲンガーもメガ進化まで育てた。
ほぼ育てたいものはディスクゲットボーナス目当てに育てきったのであるが…その間にパルキアやラティアス、ラティオスというメインの獲得が叶わないのである。
ゲーム難易度は倒すのが難しい難易度ではなくて獲得が難しい難易度なのであろうか…と、一人想う。
そうこうしているうちにラティアス・ラティオスコースは終了…。実は原作を知らないので個人的にはどうでもいいのであるが…。娘はことさら手に入れたかったようである…娘には可愛く見えるらしい。
【美しさ】
そういえば子供が可愛い・きれい、と思う感性にはいつも驚かされる。
そんなところを見ていたのかと思う事が度々である。
大人になり早い時間の中で世俗にもまれ、いつしかそんな事にすら気付かない生活を送っていたのであろう…いや、気付いていたが自分から見ようとしてこなかったという方がより正解に近いのか。
娘と居ると、人類の根幹であろう、美しさを素直に美しいものであると感じ入ってしまう瞬間が…ふと立ち止まれる時間の到来があるのである…そう言えば…自分はいつも何に慌てているのであろう…何に対して娘をせかしていたのか…とも想う。
そんな大人の時間軸から外れ、歩いていてもすぐ立ち止まり、たんぽぽの綿毛を見て『可愛い』という娘。
日頃パパの庭掃除としてはやっかいな敵であり、引っこ抜くだけの相手であった雑草から可憐な花が芽生えるのを見て『きれい』といい、小さな小さな花束にする娘。
あぁ…自然はこのような美しいものであったのか。雑草という名の草は無い、といったのは昭和天皇であったか…。
美を美と思う感性を娘に教えられることしきりである。
自分が忘れている記憶を呼び覚ます…自分の自分らしい感覚を取り戻してくれる…自分の最良の部分を再認識させてくれる娘は最高の娘であり友であり教師なのかもしれない。
綺麗なものは無条件で綺麗である。それは何百年を経てもその美の本質は変わらぬものなのである。
正倉院展などでもそう想う。今の時代においても美しいもの綺麗な物は何百年を経ても色あせず永遠に美であり、今後何千年を経ても…美から受ける印象は…人類不変なのであろう。
【コギトエルゴスム】
そんな娘らしく、可愛いキャラクター物は大好きであるようだ。
逆に息子の幼少時はキャラクター物を身にまとう事には興味を示さず、逆にキャラクターになりきるタイプであった。戦闘物系のキャラクターにはまっている時代には…その相手をするだけでどれだけ世間のパパが苦労しているかは察して余りある。怪我をされないようにお祈りしておこう。
北欧シンプルナチュラルライフ志向(意味が分かるようで分からない言葉であるが)の嫁には娘のキャラクター好きは絶対に避けて通りたい路線そのものであろう。
しかし…嫁よ、例えばムーミンはその北欧が生んだキャラなのではないのか?嫁はムーミンまで否定すると言うのであろうか…いや、嫁には問い合わせしないでおこう…沈黙は金である。
シンプルなファッションセンスを娘にぶつける嫁と、頑固一徹、自分の決めた服は何が何でも譲らない職人気質の娘との、何を着ていくのかバトルはなかなかの見応えである。
嫁『今日の服は出しといたよ』
娘『いや』
嫁『これでいいから』
娘『いや!』
嫁『じゃあ何が着たいの?』
娘『これにする』
嫁『その組み合わせは絶対におかしいって』
娘『嫌、これ着るの!』
嫁VS娘…バトル開始!このバトル…課金は20回ぐらいはするであろうか。
しかし…しかしである…娘よ…君がピンクを愛している事はパパも知っている。しかし…その…全身ピンクはやめてくれないか…。
林家パー子…そのものではないか…。
いや、林家パー子が嫌いなのではない…。
全身ピンクが厳しいのではないかという話なのだよ…分かるか幼稚園児の娘よ。この写真が残れば黒歴史なのであるよ。
なぜ全身ピンクの服が存在するのか…ママ友からお下がりを大量にもらうからであり、その中で娘が気に入ったものをセレクトする為、偏ってしまうのである。
お下がりは有難いが、その組み合わせがZ技並みの脅威を産むのである。
嫁『この頑固さは誰に似たのか…』ちらっと溜息混じりに…こちらを暗に示唆する気配がする…。
嫁『私は小さいころから親に気を使って何も言わない子供であった記憶があるから私じゃないはず』…さらにこちらに意見を求める気配が濃密に漂う。
見えていないのに…ふと、なぜかゴキ〇リの存在を…視線を感じてしまう…あの能力。
そう、あのホモサピエンス本能的察知能力が嫁に対しても働くのである。
このままでは敗戦投手になってしまう事を瞬時に察知した私は…後日自分の実家に行った時に母親に孫娘の頑固さは誰に似たのか聞いてみたのである。
母親『○○ちゃん(私はいまだにちゃんづけで呼ばれる…)にそっくり』
『え?』
母親『自分の思う通りに行かなかったら道の真ん中で大の字になって泣き叫んでてたから…本当に大変な子でした。はい、頑張って育てさせてもらいました(笑)』
『え??あ…そう…ふ~ん…。』
そうか、そうであったか…娘が頑固一徹であっても全然腹が立たなかったりイラッとしなかったのは、自分も歩んできた路の記憶をトレースしていたからなのであろう。まさに子供は自分のアバターなのである。
かくして、嫁には絶対に言えない秘密がまた一つ積み重なったのである。
夫婦はコインの表と裏のようである、向き合えないくせに一緒にいなくちゃならない…誰の言葉であったか…ふとそんな言葉が想起される。
娘よすまない…パパに顔は似てなくて大正解であったがDNAは間違いなく引き継がれているようだ。
【水神アルセウス】
さて、今日も仲間を増やせない予感を得つつ、林家パー子さながらの鎧をまとった娘がシンオウ地方コースに挑むべくバトル開始する…しかし…やはり取れない。
気合が600%を超えてもメインボーカリストが出現しないコンサートがあるのかと驚いてしまう。
普通神アルセウスと炎神アルセウスを仲間に入れているので、水神が今回手に入れられれば、あと残す神は1柱だけになる。ここはなんとか水神が欲しい所であるが…。
逆に水神アルセウスが手に入らなかった方が、いいのかも知れないな…と、娘のバンバン叩く姿を見ながら…想う。
水神アルセウスを得てしまうと、草神アルセウスを狙わざるを得なくなり、4柱目のアルセウス神が取れなかった時のショックが大きすぎて、AEDが必要となるのではないかと危惧するからである。
心臓は強くはない…のである。
時間的に水神アルセウスに挑む最後のターンがやってきた…。娘にも最後ね、とは伝えてある。
今日は幸運を呼ぶカピバラの人形も置いてバトルしている。娘も神頼みや縁起を担ぐという事をなんとなく実践しているのかもしれない。
ダークライのZ技発動で水神アルセウスを倒すことに成功するのであるが…Z技チャンスにパパを呼ぶことが無くなってしまった…。
そうなのである、最近は自分で目押しするのである…。悲しい。ポケモンガオーレの中でパパの絡みがついに…ゼロになったのである。目の前で娘の出来る事が増えていくのは娘自身の成長なので喜ばしい事ではあるのだが…。
いつの間にか大人への階段を登っている。
娘よ…そんなに早く大人にならなくていいのだよ、もう少し幼児の期間をパパにくれたまえ。
最後の3戦目が終了する…またもやスーパーボール。
最近は先輩やⅯ表記のボールが出てこないし…気配もない…。
水神アルセウス…取れないかな…青色がかっこいいので欲しいのではあるのだが…と、想いながらもスーパーボールに目は釘付けになる。
ここまで大人の視線を本気で釘付けにできるのはガオーレぐらいであろう。
キュル…キュル…キュル…逃げるのか!?残るのか!?まさに釘付けである。
カチ!
き、きた!水神アルセウスを捉えた…のか。
娘と思わずハイタッチする。
よもやのスーパーボールでまたも神の捕獲が出来るとは。
カピバラの御利益なのかも知れない。
カピバラはねずみの太ったオッサンにしか見えず、可愛いとはあまり想わないが、今は感謝しよう。
ありがとうカピバラさん。
次回は最後の4柱目の神アルセウスを捕獲しに行こう。
娘よ…そう、キトラ古墳壁画をわが家にもたらすのである。
“凶吉は人によりて、日によらず。”
― 兼好法師(徒然草) ―
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?