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盲導犬レトリバー幻想

1 盲導犬とはこうして出来上がる


レトリバーは本来賢い犬です。


盲導犬の訓練所を見学されたことはありますか?なければぜひ一度はいらして下さい。各訓練所では一般向けに見学日を設けています。

施設の内部や訓練の様子も見せてもらえるので、お子さんの勉強にもなるでしょう。訓練中の犬たちは本当に賢くて、黙々と訓練にはげんでいます。盲導犬一頭が誕生するまでニ百万円近い費用がかかるというのも納得して頂けるでしょう。

さて、こうして盲導犬の賢さを目に焼き付けた方々が次に考えるのは、
「そうだ、レトリバー飼おう」
ということです。訓練所の見学をした後は、「うちでもあんな賢い犬を飼ってみたいものだ」と誰しも考えるのです。
そしてレトリバーを飼われます。飼ってある程度大きくなってから獣医科病院に来て言われる感想は、例外なく「思ってたのと違う」です。

「もっと賢いと思っていた」「こんなに横着だと思わなかった」「自分勝手だ」というのもあります。
先にあの盲導犬の献身的な様子を見ているからです。

そもそも盲導犬になる犬は血統から違うのです。頭がよい、騒がない、ものに動じない系統を選んで育ててきているのです。ペットショップで売っている「レトリバー メス3ヶ月 8万円広告の品」と同じではないのです(これはうちの犬です)。訓練にかける時間も違うのです。優秀な訓練士が一日中訓練していると言ってもよいくらいです。

2 それでも盲導犬を飼いたい方へ

では、盲導犬のつとめを終えたリタイアは飼えないのでしょうか?残念ながらリタイア犬はたくさんの希望があり、なかなか回ってきません。いろいろな事情で盲導犬に適正がないと判断された犬は?これもたくさんの希望があってまず無理です。それならパピーウオ-カーになれないだろうか?

パピーウオーカーのお宅を訪問してみて下さい。室内で飼うのが条件ですから、例外なく家中ボロボロです。それ以上に手放すときはお別れの涙です。
子犬から飼っていた犬を、ちょうどかわいくなる時に引き上げられるのですから、その辛さは尋常でないと思います。

盲導犬バザーのデモに来たレトリバー

3 それでもレトリバーが好き

こうして偏った情報や、自ら作り上げた幻想でレトリバーを飼ってしまった日本中の飼主さん、ひとつ救いがあるとすれば、レトリバー犬は約2歳頃から落ち着いてくるということです。
また、クレームの主な要素である「適当すぎる性格」「マイペース」というのも、実は盲導犬に向いているのです。一日中利用者さんと付き合う生活なので、「休めるときは休む、いつも緊張しない」という性質はこうした仕事に非常に適性があると、盲導犬訓練所で伺いました。
盲導犬の歴史の中で、最初に使用された犬種はシェパードでした。
シェパードは賢い犬ですが、緊張を適度にほぐすことができなかったので、盲導犬にあまり適性がないという判断になったと聞いています。
要は「あまり真面目すぎるのも困る」ということなのですね。
盲導犬の訓練も一歳前後から始まります。すぐに諦めずもう少し待ってみて下さい。本来家庭犬に向くよい犬種です。時間をかければそれだけの結果がきっと得られるはずです。

追記:記事の掲載中にラブラドル犬は、アメリカの人気犬種一位から転落して、その地位をフレンチブルドッグに譲りました。

適当な性格の我が家の犬です。

似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
ブログ「獣医学の視点から」

オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/

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