うすきはだゆびに馴染んだいつもの装置捨てた矜持と持ち越す矜持と #tanka

息を止め二の句は埃と知りながらわざと忘れて穀雨聞く夜 #tanka

胸元に過ぎる昨夜の不言色ひとり眺めて雨を降らせる #tanka

眼前にない地獄にまで薪くべる芍薬くずれる夜に似ていた #tanka

沛然と天地を洗う花時雨人の数ほどうつつを知れども #tanka

不同意の輪郭撫でておしだまる私が泳ぐ恥雲の海 #tanka

あざとさに塗炭の歌を透かす時刺繍の女とガラスの向こう #tanka

君だけが閉まる扉に手をかけて紡がぬ祝言灰桜 #tanka

もうこれで霜が根をはる汚泥しか残らないから消して旅立つ #tanka

落ちる陽の昨日の夢を抱きとる涙水縹窓のそとから #tanka

菜種梅雨花を散らして終焉が視界に入る安堵のため息 #tanka

よすてびとうつらぬ鏡をおしつける私は消退の月下老人 #tanka