トライポッド 第1話

「俺は」
「私は」
「我は」

一体、誰だ

ふと目が覚めた、体が痛い
どうやら床に寝かされて居たらしい

「まぶし……!え?なんだここ」
目を開けると、辺り一面白い部屋にいた
当たりを見渡すと、壁や天井に至るまで白く、部屋はかなり広い様子だった
奥の方をふと見やると、2人倒れていた

「おい!お前ら、大丈夫か!」
近づいて体を揺すると、すぐに2人は気がついた

「ん……え……?なんですか、ここは…私は……何処に?」
「むぅ……まだ眠いぞ……んん!?なんだここは!」
1人は華奢な長髪の男、もう1人は身の丈2メートルはあろうかという大男であった

「えーと、あなたは?」
「いや、俺もさっき起きたばかりで何が何やら………」
すると軽快な音楽と共に天井が開き、黒い板の様なものが降りてきた。すると『モニターに注目』と黒い板に現れた。どうやら、黒い板がモニターという奴らしい

すると突然1人の男が映された

「あーあーあー、テステス……うおっほん!!お目覚めかな、諸君。私の名前はキョウジ・イザワ、文学レジスタンスのリーダーです」

突然画面に現れた男に呆気に取られていた
「あれ?まだ目覚めてないのかな?まぁいいや。」

俺は我に返り、モニターに問いかけた
「いや、うん、わかんないんだが?お前の言ってることも、今の現状も…で、なんだ?文学レジスタンス??」

おお!というリアクションをして俺の言ったことは意に介していないようだ。何かを探しながら、イザワは続けた
「起きてた起きてた。えーとね、あなた方、自分が誰か覚えてる?思い出せないはずだよ」

そういえば、自分の名前が出てこない
「なぁ、華奢なあんた……名前は?」
華奢な男は答えようと口を開くが、言葉が続かない
「わからない…いや、分かってるんだろうが、言葉にならない…そちらは?」
大男も同様であった

「しかし、我は…主らの顔をみた覚えはあるんじゃがのう……はっきり思い出せん」
「なんだと!?」

3人で話をしていると、イザワがまた話始めた
「まぁまぁ、落ち着こう。いやね、あなた方が名前を思い出せないのには訳があってね?『文学破滅機構』とかいうテロリストがさ、この世にある『文学作品』を尽く『無かったことにしちゃって』ね。」

はぁ?と情けない声をあげてしまった。
だってそうだろう、文学作品を無かったことにということは、消された?ということだ、現実には起こりえない
「いや、普通無理だろ」

「うん、でも奴ら無理やりやっちゃったの。で、あなた方が『生き残った』んだけど、記憶までは守れなかった。つまり!あなた方は『文学作品の登場人物』だったのよね」

「なんだと!?」
目を丸くする大男、すると華奢な男が
「では、なぜ私たちはこのような場所に閉じ込められているのでしょうか?」

至極真っ当な意見だ
何も無く、こんな部屋に閉じ込められているわけはない
これはイザワも

「話が早くて助かるよ。あなた方には『消された文学作品の救出』をお願いしたい。そして名前くらいはお教えしよう、記憶もそのうち戻るだろうし」
「俺たちの名前か?早く教えてくれ、なんか気味が悪い」

イザワは一息つくと、資料を取り出した

「おっとあったあった...えーと、長髪のあなた、あなたはトリスタン伝説のトリスタン」
「大柄なあなた、あなたは夏目漱石『こころ』のK」
「で、そこのあなたは………太宰治の『走れメロス』のメロス」

名前を聞いた瞬間に、頭に『自分の物語』が流れ込んできた

苦しい...なんで俺が...でも...友のため...
確かに、俺たちは『物語の登場人物』だった

「......っ!!!はぁ...はぁ......」

「これ...は...」

「我死んでるじゃないか...」

「じゃあ、武器は後ろのドアを開けたら準備されてるから、あ、そうそう、今後連絡ある時はこのモニターじゃなくて、この子が行くからね。」
画面に現れたのは、水色の鮮やかな洋服の少女だった

「私はね、私はね、アリスっていうの、うふふ、これからよろしくね、キャハハ」
アリスと名乗る少女はとても明るかった、不気味なほど

「じゃあ早速だけど、3人に救出に出てもらいたい」

3人は顔を見合わせ、イザワのほうへ向き直った
「いやいや、早くないか!?」

「一休みさせてくれ、さすがに我も堪える...」


「まぁまぁ、時間がないんだよなぁ...あと一個注意!奴らに出会ったら、ひとまず逃げること!いいね、物語がデリートされちゃうから」

イザワは画面を切り替え、説明する
「よーし、インターバル1分!いいね!では、今回救出に行ってもらいたいのは『銀河鉄道の夜』だ」

────
ねぇ、ジョバンニ、君はどうして……

かかかか!これは復讐だ

次回
Jの心/銀河鉄道の夜

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