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映絵師の極印〜えしのしるし〜 第五話 前編・壱 -集結-

前回のあらすじ

武市、炎、陸はハプニングや悩みを解消しながら、無事修行を終え、確固たる自信と力を身に着けた。そして、鳳一家との決戦に向け、動き出そうとしていた。


3人は、銀の店『万事屋村前』の前にいた。

「なんや、前もこんなことあったなぁ」

「長く感じられたが、ほんの数日前……」

ガラガラとドアが開き、銀が出てきた。

「おう来たか。こっちだ。」

店の裏側へ移動すると、裏には人が入れるだけの大きさの焼却炉があった。

「さぁ、ここが裏の入り口だ。入れ。」

「いやいや、銀じぃ、煙出てるやん!」

あぁ、と焼却炉のドアを開けた。すると中はきれいなエレベーターであった。

「なぁに、煙はカモフラージュだ。とりあえず、ここは街からも死角になるように作られているから、バレる心配もねぇ。さぁみんな待ってる。」

皆エレベーターに乗ると、ぐんっと地下に下降していった。

そして、ドアが開くとそこは近代的な円卓が置かれた会議場になっていた。

「よう、ようやく来たか、坊主ども」

「炎、陸……よかった……」

「武市!よく無事に戻った!」

そこには、ジャンを始め、宝治、弾、そして狼がいた。
しかしそこには一人見知った顔が座っていた。

「え、鉄!?お前どないしたんや!!」

「一介の飯屋がなんでこんな所に…」

武市が言うや否や、鉄は炎を一発殴り胸倉を掴んだ。炎や武市の言うことは最も。作戦には鉄の名前は無かったはずなのだから。

「お前らな、俺かて一応映絵師の端くれやぞ!みすみすこの街を危険に晒すような真似できるかい!炎、修行やるなんて水臭いやんけ!なんで言うてくれへんのや!陸もそうや!俺はお前らの1番の幼なじみやろうが…俺は約立たずで終わらんぞ!」
そう言うと、鉄は鉢巻を取り出した。実は鉄は宝治に頼み込んで、D-HANDSでもよりすぐりの愚連隊を結成し、今回の鳳一家討伐隊の一員となったのだ。

「飯屋飯屋言うけどな、俺かてD-HANDSや!妹や街を守らんでぼーっとなんてしてられるかいな!おぉ?!」

さすがの武市も鉄の気迫に少したじろいだ。

「おぉ、すまねぇ…あれ?そういえば、今日はこれだけなのか?」

「いや、狼の野郎が寝坊しやがってな…まぁいい。先に始めるぞ」
各々が席に付き、今後の鳳一家討伐戦の作戦に耳を傾けた。
鳳一家の住処と封印の場所が近くトンネルで繋がるとのことだった。
「……で、最終的に封印の御紋が使える俺と狼が……にしても遅せぇな、狼…」
「なら俺が迎えに行ってきますよ。一応師匠なんで」
「あぁ、ちょっと見てきてくれ…ったく」

皆が呆れながらも、様子を見に外へ戻る武市
「どうせあの店で飲みすぎたんだろうな…ほんと」
地上に出ると、銀の店へ向かって走っている狼の姿が見えた。

「狼さん、遅いですよ!」
「はぁ…はぁ…飲みすぎた……おう、悪いな」

肩で息をしている狼に持参した水を渡す。二人で裏手に回ろうとしたとき、一瞬だけ別の人影が見えた。

「ん?今なんかおったか?」

「狼さんもみましたか……誰だ!」

武市が声をかけると、影は慌てた様子で跳ね、壁の向こうに逃げた。壁の向こうに消える姿を見た武市は、それが三毛であると察した。

「!! 待て!三毛!!」

「なんやと?!おい、一人でいくな!!」

三毛を追う武市。狼も散々走っていたにも関わらず、一瞬で頭に血が登った武市を止めるため、走った。

狼は走りながら電話を始めた

「銀!!三毛の野郎が裏手におったぞ!今追ってる!あとでな!」

銀は電話口で「おい!」と言っていたが、話を聞いてるうちに、二人が大きく離れていった。

「俺も年か……いやぁ、まだ負けられへんわ!」

狼が武市に追いついたころ、一軒の廃屋があった。

「おい、あいつはどこ行ったんや」

「ここです。誘導された感もあるので、狼さんがくるまで待ってました…気配はあります。」

あばら家のような小屋だが、外から隙間が全く見えない。しかし、確実に気配は感じる

「おぉ、この気配…あいつもおるで…しゃーない、出てこんなら、こっちから入るしかないやろ!入るぞ…」

「えぇ」

二人は壁に隠れながら、ドアを開けた。
中は外と同じように外からの明かりの周りには物が散乱しているが、他は真っ暗闇が広がり、何が飛び出してくるかわからない状態だった
ちらりと奥を見ると、足音と笑い声が聞こえてきた

「ふぉっふぉっふぉ…隠れてないでいいんですよぉ?」

「やっぱりおる思うたわ、クソが!」

奥から不気味な気配を漂わせた虎が、にやりと笑いながら現れた。

「今日はどうされたんですかぁ?坊っちゃん、狼?」

「虎…てめぇ…」

虎は高笑いをあげると、自分のひげを抜き、矢のように二人へ放った。

とっさに躱す二人が再び虎のほうを見ると、虎はすでに天井からのびた縄梯子に登って逃げようとしていた。

「待てや、くそったれ!」

「虎!てめぇにゃまだ聞きてぇことがある!まて!!」

虎はもう一発矢を放ち、ささっと逃げていった。

「坊っちゃん、狼…私はまだまだあなたがたとは戦いませんよぉ?あとは頼みましたよ、三毛」

「逃がすか!あいだ!!!!」

狼は激痛にたまらず声を上げた。痛みの方を見ると、自身の足に匕首が付き立てられ、文字通り「足止め」されていた。

「おい、武市気をつけろや!!」

狼が匕首を抜き、武市に声をかけるかどうかの瞬間に、武市の頬を何かがかすめた。つぅっと流れる血に、ドクドクと心臓が跳ねた。

「どこ、見てるのかなぁ?」

どこか間延びした声に振り向くと、目がランランと輝いている三毛の姿があった。

「三毛……お前…」

三毛の姿に近づこうとする武市を静止する狼。

「あかん、あいつガンギマリや…『ミミズ』食うてるわ」

血走った目、溢れ出るよだれ、そして

「あぁ、武市……君の相手はぁ、僕だよぉ!!」

匕首を手に飛びかかってくる三毛。そう、凶暴性も増していた。

「三毛!目を覚ませ!!」

「ひゃはは!楽しい!武市!遊ぼうよぉ!」

「三毛……」

武市は変わり果てた姿の三毛に、心を痛める。

「武市!そいつは今、お前の過去のお友達とちゃうぞ!明確な敵や!!」

「……うっるさいなぁ、おっさん」

そういうと、狼へ数本の匕首を飛ばした。足の痛みで動きが鈍い狼はさすがの出来事に目をそむけたが、さらなる痛みに襲われることはなかった。

「三毛、やめろ……」

狼に投げられた匕首は、全て武市が手で受け止め、折った。

手からはドクドクと血が流れていた。しかし、武市は冷静であった。

「俺はお前を今でもちゃんと親友だと思ってる……だから、今俺は全力でてめぇを殴る!!」

「やぁってみなよぉ!!ぶぅちぃ!!!」



ーーーーー次回、第五話 前編・弐 -親友-

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