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読書 二人目の私が夜歩く

                辻堂 ゆめ

 内気な高校3年生の少女茜と寝たきりの生活を送る女性咲子。二人は『おはなしボランティア』を通して出会うが、交通事故の被害者という共通点があった。
 咲子は事故の後遺症で体が動かず呼吸さえ人工呼吸器に頼る日々。一方、茜は乗っていた自動車が寝ている間に事故に合い両親と死別した過去から不眠症を患っていた。しかし、茜は自身は事故直後自分が不眠であったことは理解しているが、今もまだ眠れていない事に気がついていない。

 二人は急速に親しくなる。そして茜と咲子が出会うことによって、誰にも認識されず夜に閉じ込められていたもう一人の少女が歩き出す。
 昼間には見えなかった人の心の奥深くが、夜の闇の中で映し出される。決して美しい心ではない。けれど自分でいたい。咲子の願いが彼女を動かす。そして秘密を共有し真実を得た二人は朝日に追い立てられるように夜と共に消えてしまう。茜だけを残して……。

 茜は茜の思う真実を胸に、咲子との思い出を胸に生きていくのだろう。けど、夜の真実を知らず、言い方によっては咲子にも、もう一人にも欺かれ利用されて、心身衰弱しながら尽くした茜が不憫にも思える。けれど自分で作中何度も言うように、咲子は善人ではない。目的のために他人をどんどん巻き込んでいく。その自分勝手な様が人間らしく生々しくも魅力的なのかもしれない🥲

 設定がとにかく魅力的でドキドキしながら、あっという間に読める。物語に引き込む引力が強い。

 以下ネタバレに配慮なし。




 内気で友達もいない少女と設定された茜の行動力、夜に歩き回るもう一人の突拍子もない行動、それに応じる大人二人の行動も多分に無理がアル。……。

 茜の事故と、自分の事故が無関係と思わせるために、とっさに場所と時期を巧みに誤魔化した咲子は確かに頭が回る……。けど、真夜中に、特に男性(女性関係にだらしない)に、会いに行かせようとする咲子の行動は『心のきれいな人ではないい』、では済まされない。読んでて無理がアル……。と思わなくもない。
 そもそも咲子のお願いは自殺幇助、悪くすれば殺人そのものなので、例えばバレなくても、それを少女に背負わせようとするの、すごい🥲
 少なくとも介護していた母親は介護疲れによる殺人を疑われそうだけど。人が死ぬような事故が起きた時、それが自宅だった場合にどの程度の自己分析が行われるものなのか。
 
 そして茜の祖母は、咲子の人工呼吸器の回路が外れ死亡した日と、孫娘が徘徊した夜が同一であることに気がついているのか、いないのか。

 咲子さん、学生の頃に、八つ当たりから親友とその彼氏を嘘ついて別れさせ、親友と大喧嘩になっており。私のせいで二人の関係はもう元には戻らない、とは言うが、多分後悔も反省もしてない。そして、今また茜達や母親の人生を狂わせかねない事にも躊躇しない。ちょっとサイコパス……。そこが魅力なのかサキちゃんに詳しく聞きたい。
 



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