新たな化学物質規制
はじめに
こんにちは!
ジャストの調査診断部の伊藤と申します。
化学のことも困ったらジャストへ!!
ジャストでは、2022年10月から「環境分野」における取り組みを開始しました。「環境」という言葉からは、多くの人が脱炭素をイメージするかもしれませんが、ジャストにおける「環境分野」とは、環境調査や環境計量などを指しています。このため、当ブログでは「環境と化学」というテーマで、環境に関する情報を紹介していきます。より多くの方に「環境」について理解していただけるよう、取り組んでまいります。
もうすぐ新たな化学物質規制が始まります!
5回目の今回は『新たな化学物質規制』と題し、労働安全衛生法による新しい化学物質規制が、令和5年4月1日より「自律的な管理」として施行されることについて概要を解説します。1年後の令和6年4月1日には本格的な施行となりますので、規制に違反しないように準備してください。
労働安全衛生法施行令等の改正
「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について」として令和4年2月24日に公布されました。この改正により、危険性・有害性が確認されたすべての物質に対して、国が定める管理基準の達成を求められることになりました(管理基準が設定されていない物質に関してはばく露低減の義務があります)。
以下に改正のポイントをまとめましたが、項目によって施行年度が異なりますので、詳細は概要を参照してください。
労働安全衛生法の新たな化学物質規制
労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の概要
(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
https://www.mhlw.go.jp/content/000946001.pdf
1.ラベル表示・SDS等による通知の義務対象物質の追加
国によるGHS分類で危険性・有害性が確認されたすべての物質が順次追加されていきます。令和4年2月公布の労働安全衛生法施行令改正では「243物質」がラベル表示等の義務対象に追加されました。
GHS分類とは
2.リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務
1)ばく露濃度の低減措置
①代替物質の使用
②排気装置、換気装置などの設置・稼働
③作業方法の改善
④呼吸用保護具の使用
⑤国が定める管理基準の達成
2)労働者からの意見聴取、記録作成・保存
①措置・ばく露状況について労働者から意見を聞く機会の設置
②記録を作成し3年間保存(がん原性物質(※1)は30年間)
※1 がん原性物質について
厚生労働大臣が定める「がん原性物質」については、作業記録及び健康診断の結果等について30年保存しなければならないとされています。令和5年4月1日に適用され、追加される化学物質は約120物質となります。
対象となる化学物質は、リスクアセスメント対象化学物質のうち、発がん性が区分1(区分1A又は区分1B)に分類されたものとなります。但し、エタノール(業務起因性が不明)と特別管理物質(特化則にて規定済)、及び該当する化学物質を臨時に取り扱う場合は除外されます。
3.健康障害を起こす化学物質への直接接触の防止
保護メガネ、保護衣、保護手袋など、使用する化学物質など用途に合わせ適切な保護具を使用しなければなりません。
労働衛生保護具について
職場の安全サイト(厚生労働省)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/taisaku/common_PPE.pdf
4.衛生委員会の付議事項の追加
衛生委員会の付議事項に、化学物質の自律的管理の実施状況について調査審議しなければなりません。
5.リスクアセスメント結果に関する記録と保存
対象となる化学物質に対しリスクアセスメントを実施し、ばく露低減に努めなければなりません。また、記録を作成し、次のリスクアセスメント実施までの期間(最低3年間)保管しなければなりません。
(参考)化学物質リスクアセスメント支援ツール CREATE-SIMPLE
職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
(参考)モデルSDS(安全データシート)情報
職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
6.リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務
リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講じるばく露防止措置の一環として、必要がある場合は、健康診断の実施・記録作成等を行わなければなりません。健康診断を実施した際は、その記録を作成5年間(がん原性物質は30年間)保存しなければなりません。
7.化学物質管理者の選任
リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、譲渡提供をする事業場では、化学物質管理者の選任をしなければなりません。選任要件として化学物質の管理に関わる業務を適切に実施できる能力を有する者となっており、一定の教育が必要となります(製造事業場:義務、それ以外:推奨)。
【職務】
・ラベル、SDSの確認及び化学物質に係るリスクアセスメントの実施の管理
・リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
・化学物質の自律的な管理に係る各種記録の作成・保存
・化学物質の自律的な管理に係る労働者への周知、教育
・ラベル、SDSの作成(リスクアセスメント対象物の製造事業場の場合)
・リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
(参考)改正省令に対応した化学物質管理研修
8.保護具着用管理責任者
リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場では、保護具着用管理責任者の選任をしなければなりません。選任の要件は保護具について⼀定の経験及び知識を有する者とされていますが、教育などの規定はありません。
【職務】
・有効な保護具の選択
・労働者の使用状況の管理、その他保護具の管理に係る業務
9.雇い入れ時の教育
危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱う全ての事業場
で、化学物質の安全衛生に関する教育を行わなければなりません。
化学物質基礎・化学物質管理 各種教材
職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
10.化学物質を別容器等で保管する際の措置
ラベル表示・文書の交付その他の方法で、内容物の名称やその危険性・有害性情報を伝達しなければなりません。
• ラベル表示対象物を、他の容器に移し替えて保管する場合
• 自ら調整したラベル表示対象物を、容器に入れて保管する場合
ジャストの取組
今後、ジャストでは環境分野にも力を入れていく予定です。皆様のニーズに合わせて、サービスメニューを拡充していきたいと考えています。
今回は、4月より規制が厳しくなる化学物質の取り扱いについて取り上げました。コンプライアンス遵守とリスクの低減は、企業としての価値を高めることにもつながります。化学物質の取り扱いは一歩間違えると、大事故につながるリスクがあります。正しく取り扱い、安心・安全な職場環境を実現しましょう。
「化学のことも困ったらジャストへ!!」
化学物質のことで分からないことなどありましたらお気軽にお問い合わせください。
おわりに
今回は、ジャストが化学分野において新たに取り組んでいることの一例として、『化学物質の取り扱い』について最新情報を紹介しました。
この他にも「環境分野」に関連した多彩なメニューをご用意しておりますので、今後も新しいメニューの紹介を予定しています。次回以降も、ぜひお楽しみにしていてください!
ブログ執筆者
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