〜構造耐震指標「Is値」とは?〜(2011/6/21掲載)
※本コラムは、2011/6/21に株式会社ジャストのコーポレートサイトへ投稿されたコラムの再掲となります。
前回のコラムで、耐震診断は主として1980年以前の「旧耐震基準」で建てられた建築物が対象であることを紹介しました。では、こうした建物の耐震性能はどのようにして求めるのでしょうか。
1981年以降に採用された新耐震基準では、建物の規模や形状・特性などによって異なりますが、建物が一定の保有水平耐力(地震による水平方向の力に対応する強さ)を有しているか否かを何らかの方法によって検討するよう規定されています。しかし旧耐震基準の建物は、現在と設計法が異なるため、この保有水平耐力で耐震性能を測ることはできません。そこで重要な指標となるのが「Is値」です。
Is値(Seismic Index of Structure=構造耐震指標)とは、建物の耐震性能を表す指標で、Is値が大きければ大きいほど耐震性が高いと判断されます。このIs値は、以下の式で求められます。
Eo(保有性能基本指標)とは、建物が保有している基本的な耐震性能を表す指標で、具体的にはC(建物の強度を表す指標)×F(建物の粘り強さを表す指標)で求められます。またSd(形状指標)は、建物の形状や壁の配置バランスを表す指標。T(経年指標)は、建物の経年劣化を表す指標です。つまりIs値は、建物の強度と粘り強さ、形状やバランス、経年劣化といった耐震性能に関わる要素を総合的に判断する指標というわけです。
では、このIs値がどれくらいなら安全といえるのでしょうか。2006年1月に出された国土交通省告示第184号は、
としています。十勝沖地震や宮城県沖地震でも、Is値0.6以上の建物で甚大な被害を受けたケースは見られないことから、Is値の妥当性を判断することができます。
こうしたことから、一般的な建物については「Is値0.6以上かどうか」がひとつの重要な目安となります(ただし建物の規模や用途によって例外もあります。例えば文部科学省では、公立学校施設のIs値を「おおむね0.7を超えること」としています)。
とはいえ、Is値が0.6以上なら絶対安全というわけではありません。前述のとおり、建物の耐震性能は主に強度(C)と粘り強さ(F)で決まります。従って総合的には0.6以上でも、Cが高くFが低い建物は、限界を超える力がかかると突然破壊に至る場合があります。逆にCが低くFが高い建物は、地震を受け流す力が限界を超えると、大きな変形が生じ、大破・倒壊につながる可能性もあります。
こうした点も考慮し、耐震診断では、建物の形状(Sd)や累積強度(Ct)に関する指標も判定基準とするのが普通で、一般的には以下の数式を満たせば「相応の耐震性能を有する」と判断されます。
なお、耐震診断には1次から3次まで3種の診断レベルがありますが、次数が上がるほど診断内容も精密になり、当然ながら診断コストも増すため、建物の用途や構造特性などを考慮のうえ、合理的な診断レベルを選択する必要があります。私たちジャストでも、予備調査(現地の目視調査、設計図書の確認など)の結果を踏まえ、お客さまに最適な診断レベルをご提案しています。