そして父になる
※本コラムは、2019/4/26に株式会社ジャストのコーポレートサイトへ投稿されたコラムの再掲となります。
私は父が嫌いだった。
外見や体質等、思春期の私が抱えていた数々のコンプレックスは、 父譲りのものばかりだった。
私の父は忙しかった。
休日出勤や、終電に間に合わずタクシーで帰宅することも珍しくなかった。
一緒に暮らしていながら、何ヶ月も顔を見ないこともあったが、 私にとってはむしろ好都合だった。
ところが、社会人になってからだろうか。
日に日に父に似て来る自分の顔を見ると、 思わずニヤけてしまうことに気が付いたのは。
そして、結婚を決めたときだろうか。
幼少期の写真を見返すと、小さな私を抱えながら嬉しそうな表情を浮かべる父の顔にハッとしたのは。
そういえば、身体が弱く夜中に喘息の発作を起こした私にいち早く気付いて介抱してくれたのは、いつも父だった。
そういえば、所属していた地元のサッカー少年団の試合に 行けないと言いつつ、こっそり木の陰から見てくれていたのも父だった。
そういえば、初めて自転車に乗れたとき、後ろを押さえながら一緒に走ってくれたのも父だった。
父との思い出は私の中にしっかりと刻まれていた。
父は限られた時間しか割けない中で、いつも私を見守り支えてくれていた。
父は私に無償の愛を注いでくれていた。
そして私も父になった。
結婚して8年、待望の子供を授かった。
その知らせに普段は出さない大声で喜ぶ父。
その子を緊張気味で恐る恐る初めて抱っこする父。
かつては逞しかったその腕も今では痩せ細っている。
父が私にしてくれたことを、今度は私が息子にしてあげたいと思う。
ただ、父の様に無償の愛とはいかないかも知れない。
だって、今私が父を大好きな様に、息子にも私を好きになって欲しいと思うから。
営業第2部
北村 悠