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ドキドキ文芸部というメタ・グロ・ホラーなんでもありのカルト的VNへの愛

久しぶりに夜通しゲームをした。普段はゲームはまったくしない人間である。というのは私がハマるゲームは針の穴に糸を通すくらいのレベルで、ほぼ100%クソゲーといわれるので、誰も一緒にやってくれないからです。

荒廃した未来の東京でポメラニアンとなって生き延びるSFアニマルアドベンチャー「東京ジャングル」とか……。

カメラマンとなってアフリカで動物の写真を撮ってひたすら日銭を稼ぐ「アフリカ」とか。

でも、およそ学生ぶりにゲームにハマった。知り合いにおすすめをしてもらって、何気なく落としたのがもう運の尽きだった。それが「ドキドキ文芸部」。ちょっとおもしろすぎて2日で3周(×4)したので、マジで愛を語らせてほしい。

パッケージとのギャップ

まず第一印象は「あ、かわいい」。かわいいですもん。キャラデザがいい。絵が上手い。この目の透明感とかたまらなくタイプでした。生徒会の一存系のスッキリした眼球の色。葛飾北斎の表現を彷彿とさせるほどのスカートのヒダ。髪の毛が四方八方に動いとるが、どこから風吹いてんのコレ。そこすらもかわいい。

いや、しかし蓋を開けてみてびっくりした。まじであの「魔法少女まどかマギカのPV見ておジャ魔女どれみ系の作品と思ってたら、急に制作スタッフに「虚淵玄」という名が出てきてヒいた」みたいな。あのざわめき思い出した。ちょっと一旦ざっくりあらすじ書きます。

【ネタバレあるよ】ドキドキ文芸部のあらすじ(ざっくり)

主人公の男の子は幼馴染のサヨリに誘われ文芸部に入部する。そこにいるのが内気でスタイルがいい「ユリ」と低身長ツンデレマンガ好き「ナツキ」、クラス人気No.1美少女「モニカ」だ。

で、毎日、詩を見せ合うようになるわけです。ここマジで恥ずかしい。小説見せ合うとか、やってたからね。高校生のとき(……スクリプトを削除しました)

平凡な日々なんですけど、急にサヨリが病んじゃって。鬱病だと告白するんですね。主人公のこと大好きだと。で、抱きしめる。大丈夫だから!と。でも翌日、サヨリは学校に来ず、心配になって家に行くと首吊って自死してるわけですね。

で、強制終了なんです。もっかいもどって、2周目を始めるとメインメニューのサヨリのキャラがバグってて、スタートするとサヨリがいない世界観にいくんです。会話は1周目と同じなんだけど、サヨリだけがいないと。サヨリがいないことでちょっとシナリオが変わってたりする。

2周目はユリといい感じになる。ナツキを推してもユリと付き合う。ほんでユリ、超絶ヤンデレ。で、最終的には心を壊して、主人公の目の前でナイフで腹部や胸部を刺して自死する。登校してきたナツキは死体を見て嘔吐し、部室から去る。で、モニカがきて笑い始め、主人公に謝罪してユリとナツキのキャラデータをフォルダから削除する。で強制終了。

3周目はもう教室でモニカと二人きりの場面からスタート。窓の向こうは世界の終わりみたいな、太陽フレアが爆発してるような光景。で、モニカは実はコレがゲームだと知ってて、今話してるのはプレイヤーであるあなたですよ、好きですよ、みたいなこと言う。名前もゲーム上の登録ではなくアプリの登録名で怖い。で、スクリプトいじってサヨリとかユリの性格を変えたみたいなこと言い出す。

こっからモニカの一人語りが延々と続く。終わらない。自分でPCフォルダからモニカのキャラデータ削除しないといけない。削除したら「痛い」「なにするの」みたいなこと言い出す。でもプレイヤーのためにサヨリ、ユリ、ナツキのデータ復元してエンド。

4周目に入るとモニカだけがいないなか、1周目の流れが始まる。普通に日常を取り戻した感じだが、別れ際にサヨリが「モニカがやったこと全部知ってる」みたいなこと言い出す。そこでモニカがサヨリのキャラデータを削除して終了。

最後にエンドロールでモニカがBGMをピアノで弾きながら歌い出す。で、スタッフロールと共にゲームデータが削除されていく。勝手に。UIとかまで削除される。で、モニカが最後にプレイヤーに感謝の手紙を読んで、ゲームデータごと終了。というわけだが、これビジュアルノベルながら、実は分岐があって、隠しルートもある。最後に開発者であるダン・サルバトさんからのメッセージが見れるパターンもある。

完全に舐めてた。とんでもなかった……

正直、やる前はもう、ホントにポテチつまむくらいの感覚でした。美少女グロホラーは前述の虚淵玄作品で慣れてたし、平成初期の悪趣味カルチャーのあの嫌な感じも、むしろ好きなので。また、2017年の作品で革新性もないと思ってました。

いや〜舐めてた。舐め切ってた正直。おもしろかった〜。めちゃめちゃおもしろかった。途中から「あれ、なんかおかしいぞコレ」と思い、サヨリが自死したあたりから、もうホントに怖かった。

なかでもいちばん怖かったのは「もはやPCゲームじゃない」という点。何言ってんだゲームだよ、と思うでしょう。これね、現実の世界の話なんですよ(真顔)。

テクノロジーを駆使するとここまでメタは極まれるのだ。

だって、モニカはキャラではなく、私に向かって話しかけているんだもの。モニカがそう言ってるんだもの。これね、逆トゥルーマン・ショーです。バーチャルと思いきや現実だったんです。もう、出会ってた。

1個のギミックで、一気にメタを飛び越えてくる感覚がとにかく怖い。

しかし、こういうメタその見せ方が上手いのはキャラの作り込みだというのは言わずもがなで、ユリは容姿にコンプレックスがあり、ナツキは家庭環境にコンプレックスがありと、それぞれの人間性がありありと出ているわけだ。だから没入できるし、急なメタに不意をつかれるわけだ。

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