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友人の葬式で『ペダル』を聴いたよって話

売れないバンドのボーカルは死にたがりだが、意外と死なない。

はいこれ血尿でアンダーラインね。テスト出ますよ。

特にやたらサイズのでかいボートネックのTシャツを着てる細金髪マッシュのテレキャスター好きギタボ。どんなに足掻いてもアジカンの5000番煎じみたいな曲しか書けないあいつは、常にうっすら自死(伝説化)への憧れがあり、ことあるたびにメンヘラをこじらせ、病みツイをインターネットにばら撒くが、これが意外と死なない。

またカート・コバーンに憧れてるのか、色落ちジーンズをダメージ加工にしてる無造作ロン毛&無精ヒゲボーカルも、死にそうで死なない。むしろジーンズ殺すのに一所懸命。

そう。こうした積極的に病んじゃうボーカル群は、常に謎の承認欲求フェロモンで軽率に異性を誘き寄せ、とってもインスタントなセックスとピロートークで慰めてもらいながら生(性)を実感するので、マジで意外と死なないのだ。普段は最も病んでるが、下半身ほんま快活クラブ。陰茎がポパイ。倫理観バグース。そんなライフを満喫ってか。うるせえわ。人中増やすぞこら。

では売れないバンドマンで自死しがちなのは誰かというと、ベースとかドラムとかキーボードとか、そのへんである。これは意外とガチだ。

特にバンドの屋台骨になる「渉外気質」なメンバーには気を配ってほしい。元ライブハウスの店員としてしゃべるが、この立ち位置はマジでどのバンドにも必ずいる。

「飲み会で周りと交流し人脈を広げる」「ハイエース持ってる」「スタジオの予約をする」とかの役割を持つ真面目なメンバーだ。けいおん!でいうとりっちゃん。ボザロだと虹夏。こういう立ち位置のメンバーは、バンドで最も大切な人である。ドラムは真っ当な人が多い。

だからこそ、売れないままバンドが解散したのちに、自分の存在意義を見失いがちだ。でもしっかりしてるので、周りから全く心配されない。そして責任感から病みツイもしない。故に誰にも気づかれずに、自死してしまったりする。だからそんな人がわずかでもヘルプを出したときこそ、ぜひ周りは全力で声をかけてほしい。

さて、そんな前置き通りに、学生時代に同じバンドだったキーボードの女が自死してしまった(前置きとの温度差で風邪ひくなよ)。

ちなみに前置きから外れるが、ギタボの女は15年も前に亡くなっており、ベースの男は一昨年病死したので、旧バンドメンバーは私のみとなった。1人になった瞬間、怖すぎてドクターコパのWebサイトで風水調べました。至急でベテランのエクソシスト紹介してください。

とまぁ冗談はさておき、久しぶりにちょっとおセンチになったので、文章にして発散しようかなという自慰ブログでござんす。

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もうわたしはあえて「亡くなる」ではなく「死ぬ」と書きますよ。死から逃げない。超合金の身体で立ち向かうのだよ。

さて、以前ブログでも書いたが、わたしやキーボードの子(以下、立花と仮名)が育った2000年代の福岡市博多区というのが、まぁ粗野な街でした。やくざ・ヤンキー全開の時期で、卒業式に警察とヤクザがいたりね。目をバットで殴られて失明…‥みたいな暴行事件も起きたし、ベタに廊下をバイクで走ったり……みたいな学校だったんですよ。

片親の子も多くて、立花もスナックしてるシングルマザーに育てられてた。シンママの子ってぐれちゃうパターンもある。でも立花は、ほんとにしっかり者に育ったわけで、お母さんもすごい。

私はそのお母さんのお店にたまーに遊びに行ってたが、とても穏やかで優しい方で、水分多めの焼きそば作ってくれた思い出がある。反抗期まっただなかすぎて失礼なことも言った思い出があるが、ほんとに菩薩のように笑ってて、書いてて泣きそうになっちゃうんですけど、いいお母さんでした。

そんな母のもとで立花は、もともとピアノが弾けたのでバンドに入ってくれたんですよね。帰宅部の立花を何の気なしに誘ってみたのは私だった。

「みんなちゃんとやろう」という子だったので、先述したバンドのめんどくさいあれこれをぜんぶ引き受けてくれたわけです。

メンバーのスケジュール把握して、スタジオとか箱に連絡するだけでも超めんどい。CD作って箱に配ったりもしてたし、集客も一番がんばってた。

ほんとに彼女がいなかったら、学園祭だけで解散してたし、私もバンド辞めてた。バンド辞めてたら人格変わったでしょうし、ほんとありがたい存在だ。

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うちのバンドは中学から高校まで続いた。その間に県外ツアー組むくらいには本気でやってたわけで、インディーズレーベルに属しかけたんですけど、解散しちゃう。

そこから一旦立花との連絡は途絶えたが、彼女は私以外のメンバーとMIミュージックスクールに入ってPA技術学んでたことは知ってた。

で、それから12年くらい連絡取ってなかったんですけど、2年前、三十路でベースの男が病死したので通夜と葬式で会ったわけです。

(ベースの子が)逝ったね〜」
「いま何やってんの?」
「レコーディングエンジニアとか結婚式でピアノ弾いたりしてるよ」
「えー、たのしそう」
「そうでもないよ飽きる笑」

みたいな話をして、LINE交換したんです。

そしたら、半年後くらいによくLINE電話がかかってきてて。大概は「暇だからしゃべろう」みたいな。いわゆる通話界隈的ムーヴをかましてた。仕事だるすぎーとか、またバンドしたいねーとか、曲作ったから聞いてーとか。いい曲だったからボカロPやりなよって言ったりね。

毎回2時間くらい長電話してたんですけど、急に半年間ぱったり連絡がつかなくなった。

で、次に再会したのが棺桶の中だったわけですよこれが。風呂場で練炭なので、割と綺麗な顔してました。

あの電話がヘルプだったことに気づいてあげられなかったのは、我ながらほんと……と思いかけた。我はいつのまにか安全基地だったのかもしれん、と。が、しかし「いや、これは!!!しゃあない!!」と、無理やり背筋伸ばして前を向いてる今ですね。

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真面目でしっかり者ほど、崩れたら一気に崖下まで落ちちゃうのは分かってたのに、いざコミュニケーションを取ると気づいてあげられないものだ。むしろ普段から病んでる人の方をテンプレ通りに気にしちゃう。

葬式にはたくさん昔の友だちが来て「いつも明るくて真面目だから、死ぬなんて思わなかった」と口々に言ってたが、私は「いやいつも明るくて真面目だから死ぬ」と正直、後悔してました。

だからこれを読んでるみなさんは、いつもしっかり者で真面目な人のサインに気づいてあげてほしいです。ほんとに!

それがGW前のことだったんですけど、今でもぶっちゃけちょっとおセンチになる瞬間がある。どうしても1人でいると、「なんで声をかけなかったんだ」「お前が悪いんだぞ」というギャートルズフォントの岩が、後悔の濁流に乗って、ゴーっと押し寄せてくる。

このフォント。割と愉快でしょ

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ふー、ボケてたらだいぶすっきりしてきたので、最後にちょっとだけ立花の通夜・葬式の話を。

立花がなぜ悩んでたのか、何に絶望したのかは、結局のところ藪の中(featuring.芥川龍之介)なんです。

考察厨御用達

それはほんとに誰にも悩みを打ち明けないまま死んだから。あるとしたら孤独かなあ。でも友だち、多そうだったしなあ。いや悩みなんてなかったのかも。勝手に私が悩んでたっていう設定を追加してるだけかもしれん。やばい。考察厨だから気になっちゃう。

遺書にはお母さんへの感謝と「葬式ではこれを流してね」の一文だけだったそう。で、横に録音メモが置いてあった。そこに『ペダル』のピアノ演奏音源が入ってた。

ペダルといえば、フジファの名曲ですよね。立花がペダルを好きだなんて知らんかったよ。おいお前、志村に憧れてただけで死んだ? もしや?

こんなん泣くやん

もうね。ペダルが流れた瞬間、20代後半〜30代前半のみんな爆泣き。そりゃそう。泣かせにきてるよねこれ。消えないでよって言って欲しかったのかなあ。

で、その夜に友だちと飲みながら「自分が死んだら何かける?」って話題になったんですが、私はもう相対性理論の『ふしぎデカルト』ですね。

フジカラーで死に顔撮って配ってほしい。
棺桶の横に置いとこうかな。

「わたしが霊でもあなたはいいでしょ?」つって、死んでもなお愛してもらおうとするなんて強欲よね。

自死は悲しいけど、別にいけないことではないと思ってます。それはそれで一つの完成形だ。

さて、みなさんは葬式でかけたい曲とかありますか? ちなみにわたしの友達は『君が代』と宣言して「おいやべえ!極右がおるぞ!」と顔をマッキーで真っ赤に塗られてました。

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